第67話:我が儘



「マナ様」

 考え込んでいた様子のナチェルが、顔を上げ問いかける。 

「マナ様が望んでいることを教えて下さいますか?」

「・・・・・・望んでること?」

「何でも良いのです。たとえば今マナ様は、レディル王太子に会いたくないと、そう思っているはずです」 

 ナチェルの言葉に愛那が戸惑いながらも頷く。

 その頷いた愛那を見て、ナチェルが優しく微笑んだ。

「そういったことでいいのです。私はマナ様の正直な、本当の気持ちが知りたい。知った上であなた様のお力になりたいのです。もちろん私ではお力になれないこともあると思います。ですが、お一人で気持ちを抱え込んだりしないで下さい。ライツ様がマナ様の保護者なら、私のことも同じように信頼して欲しいのです」

(理不尽な現状にいながら、私達に笑顔を見せてくれるマナ様のお力になりたい)

「マナ様は、我が儘だって、もっと言っていいんですよ?」

「私・・・・・・私は」

 ナチェルに促された愛那が口を開き、心の内を語り出す。 

「あの王子・・・・・・王太子とのことは、考えたくない。忘れたい」

「わかりました。あの方のことは口にしないようにいたします」

「その上で、魔法のことや魔物のこと、この世界のことが知りたいです」

「わかりました。いくらでもお教えいたします」

「そして、魔物の討伐はあの王太子と一緒じゃなくても出来ると証明したい」

「え?」

「私は、神様に喧嘩を売りたいです!」



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