第62話:運命の相手



 ライツのことを思い出し、顔を赤くしてうつむいた愛那。

 それを見ていたナチュレとモランは、きっと好きな人のことを思い出しているのだろうと勘違いしていた。

(ということは、マナ様はその好きな人と引き離されて、この世界に召喚されてしまったということ。・・・・・・不安でお辛いでしょうに、私たちの前ではそんな素振りを見せたりしないで・・・・・・なんていじらしい)

 ナチュレが愛那のことを、よりいっそう強い気持ちで護衛としてお守りしようと心に誓う。

 その横で、モランはどうにかして愛那の気持ちをライツへ向けさせることは出来ないかと考えていた。

 愛那の様子からライツに対してかなり好印象を持っていることは見て取れる。

 実際、好きだとも言ってくれた。

 それは好きな人と声がそっくりだからという理由だけではないはずだ。

 もともとライツは女性からモテる。

 しかしずっとライツが女性を相手にするのを見たことがなかった。

 そのライツの愛那も見るあの甘い表情。

 側近として、どうにかしようと口を開く。

「そうですか。声がライツ様とそっくりだと・・・・・・。なんかそれって、マナさまとライツ様との間に、運命的な何かを感じますね」

 モランが笑顔を作ってそう言うと、愛那がスッと、表情を無くした。

 それを見たモランが焦って声をかける。

「えっ? ど、どうかなさいましたか?」

(俺、今何かまずいことを言っただろうか?)

「運命?」

 感情のない愛那のその声音に二人が驚く。

「・・・・・・そうですね。運命の相手がライツ様ならよかったのに」

「は?」

「え?」



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