第6話:誰が【強き者】



「神よ。お恨みいたします」

「まったく。神官長の説教を受けたばかりなのだろう? 反省室で反省も出来ないのか、おまえは」

 レディルが神殿の反省室に入室してきた男を見る。

 そこに立つのはレディルにとって、いとこであり、兄のような存在であり、幼馴染みであり、そのなによりも、一番のライバル。

「ライツ・・・・・・」

「国王陛下より異世界召喚された少女の捜索を任された」

「笑いに来たのか? 結局ルーシェが俺のものにならないことに」

「いいかげんにしろ。今回のことは王太子としての資質を問われる失態だぞ」

「そうか・・・・・・。ルーシェも、王太子という地位も、結局全ておまえが俺から奪うんだな。俺は、救世主になるためにこれまで頑張ってきたわけではないのに・・・・・・」

 投げやりなレディルに、ライツは苛立ち冷たい声をかける。

「・・・・・・国王権限で、おまえとルーシェとの婚約は破棄だそうだ」

 ただでさえ暗いレディルの表情が絶望へと変わる。

「が、感謝しろ。俺が止めておいた。少なくとも、行方不明の少女が見つかるまでは、早まった行動を起こすべきではない」

「・・・・・・何故だ?」

 探るような目でライツを見る。

「レディル。この国一番の【強き者】が自分だと、どうして思った?」

 ライツの問いにレディルは当然とばかりに言い返す。

「一年前の決闘で、俺はおまえに勝った」

「そう。一年前の話だ。あれから、俺がどれだけの魔物を討伐してきたと思っているんだ?」

 レディルがその可能性に、ハッと目を見開かせた。

「まさか! もしそうなら・・・・・・」 



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