イヤな事されるの、私だってイヤだもん

学校でリンちゃんにイヤミとか言われても、私は言い返したりしないようにしてた。最初は腹立ったりしてたけど、最近では割と平気になってきてる。そういうのを『スル―スキルが身に付いた』って言うのかな。


「だって、イヤな事されるの、私だってイヤだもん」


パパにもはっきりそう言った。


私がリンちゃんにイヤミ言われてイヤなんだから、リンちゃんだって私にイヤミとか言われたらイヤに決まってる。それくらい私にだって分かるよ。


それにさ、私はイヤなこと言われたってパパが慰めてくれるもん。パパのお膝に座ってたらイヤなこともどっかに飛んでっちゃうもん。だから大丈夫。


これが、ちゃんと慰めてとかしてもらえなくてストレス溜まってくだけだったら無理だって思う。そんなの我慢できないよ。だけどさ、うちはそうじゃないもん。リンちゃんとこはどうか知らないけど、リンちゃんの様子見てたら私と同じようにしてもらえてないんだろうなっていうのは分かる。


だから私はイヤなこととかしたくない。だって、可哀想じゃん。


イジワルなことをする人って、私がパパにしてもらってるみたいなことをちゃんとしてもらえてないんだろうなって思うもん。


私も、パパが今のパパじゃなかったら、きっと頭おかしくなってたと思う。少なくともまともじゃいられないよ。ママが死んじゃって、もう絶対ママに会えないなんて、頭おかしくなるよ。


だけど、パパがいてくれるから、パパが私を大切にしてくれるから大丈夫なだけなんだ。


リンちゃんとこはパパもママもちゃんといるのに、私と同じ風にはしてもらえてないんだね。


可哀想なリンちゃん。


でもでも、イヤミ言ってくるとかは許せないよ。だから友達にはなれない。私は神様とかじゃないから何でもは許せないよ。


パパもそれでいいって言ってくれる。何でもかんでもは許せなくて当たり前って言ってくれる。許せなくてもいいから、イジワルだけはしないようにすればいいって言ってくれるんだ。だから私も我慢できるんだ。


たぶん、リンちゃんのことを許して友達になってあげてって言われたらそれはムリって思う。友達にはなれないけど、イジワルなこともしないだけ。


パパは言ってるよ。


「お父さんは聖人じゃない。だからこの世の全ての人を好きになったりはできない。だけど、好きじゃない人に意地悪をするような人にもなりたくない。そこまでカッコ悪くなりたくない」


ってさ。


私も何となく分かる気がする。パパが言いたいこと。


リンちゃんのことは好きにはなれない。でもリンちゃんにイジワルするような人にもなりたくない。


そういうことなんだよね。


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