平気になったのとは違うと思う
パパは、すごく優しい。私のことを大事にしてくれる。
小学校の低学年頃の私は、テレビとかで人が死んだりする話を見たり聞いたりするとすごく気持ちが悪くなったりしてたこともあった。
もちろんそれは、ママが亡くなったからだと思う。自分でも考えないようにしてた気はするけど、でもやっぱり人が死の話とか聞くと、ママのことを思い出してしまうんだろうな。
だからパパは、私のいるところではテレビとかも見ないようにしてくれてた。
その頃の私は、ゲームとかも全然してなかった。どうしても人が死んだりする展開があるからね。
だけどその分、いっぱいいっぱい抱き締めてくれた。ずっとお膝してくれた。お風呂で私を膝に座らせて体を洗ったりしてくれた。
そしたらね、分かるの。パパは生きてるって。
パパは生きてて、こうやって私を抱き締めてくれて、大事にしてくれてるって。
パパはあったかくて、大きくて、ちゃんと心臓がどくんどくん動いてるんだ。それが分かるとね、安心するんだ。怖くなくなるんだ。
だから私はパパのお膝に座るんだ。お風呂でパパに体を洗ってもらうんだ。ホッとするから。
そしたらだんだん、怖くなくなってきた。人が死んだ話を見たり聞いたりしても平気になってきた。テレビのアニメとかも見られるようになってきた。ゲームもできるようになってきた。
今でもママのことを思い出すと悲しい気持ちになる。だけどもうどうすることもできないっていうのも分かるんだ。
でも、パパは生きてる。今でも生きてる。私の傍にいてくれる。
お風呂で裸でパパのお膝に座るのも、居間でパンツ一丁でパパのお膝に座るのも、すごく安心するから。それがあるから、私、いろんな怖かったことも平気になってきた。
まだ一人でお風呂は入れないけど、おねしょは治らないけど、今はもう、テレビを見るのもゲームをするのも平気だよ。
だってパパがいてくれるもん。
だから私も分かるんだ。いつかはお風呂だって一人で入れるって。六年生になってからは、パパが先にお風呂から上がっても大丈夫になってきた。前は、
「待って! 私も出るから!」
って慌てて一緒に出てたのに、今はもう大丈夫になってきたんだ。なんか物音とかしたら怖くなっちゃってすぐ上がるけど、そういうのがなかったら平気だよ。
パパは、私がそうやってちょっとずつ大丈夫になっていくのを待ってくれてるんだ。
『怖がるな!』って言われたって怖いものは怖いよ。そんなこと言われて怖くなくなるとか、アニメの中だけだとしか思えない。怖くないふりをするようにしたって、それじゃ本当に平気になったのとは違うと思う。
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