「……私ね、ずっとずっと待ってたのよ。その人が私の思いに気がついてくれること。でも、もう待てない。と言うか、たぶん、待っているだけではその人は一生、私の思いに気がついてくれないのだと、最近、ついにそう結論を出したの」苺みるくを飲んでから睦は言った。

「なるほど」実は言う。

「それで私は、その人に恋の告白をしようと思ったの」

「うんうん」実は言う。

 実はじっと睦を見る。

 でも、そこで睦の言葉は止まってしまう。睦はなにかとても強い期待を込めた目をして、実のことをじっと見ている。

 そんな睦のことを見て、花村はいったい、そんなになにを俺に期待しているのだろう? と実は疑問に思った。


「わかんない?」

「わかんないって、なにが?」

 実がそう言うと、睦ははぁー、とため息をついて「そっかー。やっぱり、わかんないかー」と小さな声でそう言った。

「……あなたはそういう人だよね」落胆した態度で睦は言う。

「そんなこと言われてもわからないことはわからないよ。しょうがないだろ?」実は言う。


「まあ、いいよ。とにかく話を戻すね」睦は言う。

「おう」実は言う。

「それでね、私はその人に恋の告白をしようと思っているのだけど、……正直なところ、あんまり自信がないんだよね」

「自信? 振られるかもしれないってこと? 花村が?」実は言う。

「……うん。まあ、そういう感じ」睦は言う。

 睦は本当に自信なさそうな声と顔と態度でそう言った。睦はどうやらその恋に臆病になっているようだった。(実に恋の応援を頼んできたことからも間違いないだろう)

 つまり、花村は俺に恋の成功する自信をつけさせて欲しいと思っているに違いない。

 そう実は自分の中で結論を出した。

(そうとわかれば、話が早い)


「それは、まあ大丈夫だろ」と実は言う。

「大丈夫って、なにが?」机の上に両手を乗せて、睦は言う。

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