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宮森実と花村睦は高校生になって初めて知り合いになった。
現在、二人は高校二年生で、同じ教室になり、一年生でも、同じ教室のクラスメートだった。
でも二人は仲が悪いというわけではないのだけど、特別、仲が良い関係というわけではなかった。
だから睦からこうして「この応援をしてくれないかな?」と声をかけられて、実は少しだけ驚いていた。
ただ、そう声をかけられた理由がまったくなかったわけではない。
二人は二年生の教室でこうしてお互いの席が窓際に縦に並んで二人はとても近い場所に長い時間、いつもいるようになった。(睦の席が一番後ろの席だった)
その席で一年のときよりもずっと会話をすることが多くなった。
それがたぶん、大きな理由だろうと実は思った。(実が暇だということも、そんな会話の隅っこから、睦が見抜いたことなのだろう)
「で、花村は誰のことが好きなんだよ」実は言った。
「うん。……まあ、そのことなんだけどさ、その、私が誰のことを好きなのかは、秘密にしておきたいんだよね」と睦は言った。
睦は少し恥ずかしそうに顔を赤く染めてうつむいていた。
いつも明るくて、元気で、強気な睦にしては、それは珍しい風景だった。そんな睦の珍しい風景を見て、おお。あの花村が照れている、と思って実は少しだけこの時間がさっきよりも随分と楽しくなった。
「なによ」
長い茶色の髪をくるくると指で遊びながら、目を細めて睦が言った。
「別になにも」
実は自分がなにも変なことは考えていない、ということを睦に伝えるように、にっこりと笑ってそう言った。
二人のいる教室の中にやさしい風が吹き込んだ。
校庭に咲く桜の花びらが数枚、二人のいる教室の中の花村睦の机の上に、その風と一緒に舞い込んできた。
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