8歳の誕生日
生涯この日を忘れないだろう。
だってママがいろんな気持ちに混乱して、もう泣くしかないって感じで涙を流していたから。
今日は私、恵憂の誕生日です。
ママはいつもどおり私の誕生日をお祝いしてくれるため、私の大好きなアップルパイを焼いて、その後お買い物に行く予定だった。でも珍しくパパは
「どうしても外せない予定がある」
と言ってお買い物に行けないと言った。まぁ働いているパパには「本当に外せない予定」があっても仕方ない。と頭ではわかっていても、私はやっぱり悲しかった。プレゼントをもらって、パパもママも私の誕生をとびっきりの笑顔でお祝いしてくれる。そんな日を心で描いていたから。ママも不思議そうにしていた。
誕生日プレゼントを選んでいても寂しかった。パパがいない。それだけでこんなに心が揺れるとは思わなかった。私だけじゃない。ママもどこか寂しそうだった。
「ただいま~」
パパもママも挨拶には思うところがあるようで小さい頃から何度も言われている。というか今も小さいのだが。身長だって標準より少し低いし。
家に帰るとパパがいて、どこかそわそわしていた。
「お、おかえり」
キョドってるし。
そして夜ご飯の前にプレゼントをくれる。まぁパパは忙しかった? からないだろうけど。その考えに胸がチクッと痛んだけど子供のわがままに突き合わせるのは間違いだろう。っ思っていたら
「恵憂。「私のわがままで困らせるの間違い」って思ったでしょ?」
パパが当然の質問をしてきた。
「それが普通じゃないの?」
パパとママが深いため息をついた。
「「わがまま子供の特権だよ?」」
パパとママの意見は同じだったようだ。
「わがままの子供なんて育っててるって言わないわ」
ママのその一言は胸に刺さた。
「そっかぁ。わがまま言っていいんだ……」
「恵憂だけ泣かすなんて不公平だよね」
「「?」」
パパは一言残すとクローゼットの方に行く。
そこから出てくるのは真っ赤なワンピース。
「……あ…………あぁぁ……」
いきなりママが泣き出した。
私は訳もわからず立ち尽くしている。
ママは喜びと悲しみなどの様々な感情で私に抱きついている。というかすがっている? そういったほうが正しい気がする
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