雇用
「ユースケ、話は変わるが、これからコサイムへ行って、迷宮で稼いだとする」
「なんだよ急に」
「いいから聞け。それで、稼いだ金額はどう分けるつもりだ?」
「どうって、三人で割ればいいだろう?」
やはりそうか。
ユースケはフェミリアも分配する頭数に入れてしまっている。
ここは、はっきりと言うべきだろう。
「ユースケ、普通奴隷には分配されない」
「はぁ? どういうことだよ?」
「ユースケがどう考えようと勝手だが、世間一般では奴隷は物として考えられている。フェミリアには悪いが、奴隷の分も報酬を要求するなんて普通ありえない」
それが世間一般の考え方だ。
ユースケのいた世界ではどうだったかしらないが、この世界ではそれが常識だ。
「そんな……奴隷だって人間だろ!?」
「ユースケのいた世界ではそういう考えだったのかもしれないが、この世界、というかこの国では、奴隷は物だ。ユースケが奴隷を人間として扱うのは構わないが、それを他人に強要するのはあまりよくない。おれだって、ユースケの実力は知ってるからパーティを組んで報酬を分配するのは構わないが、そこにユースケの奴隷というだけで、フェミリアに報酬を渡すのは納得がいかない。別におれはフェミリアとパーティを組みたい訳じゃないからな」
「っ!! だけどな!!」
「ご主人様、いい。ご主人様の気持ちは嬉しいけど、フェミリアはアルの意見に賛成する。普通の人はそう考えるはず」
「そうか……おれの考えの方がおかしいんだな? 間違っているとは思わないけど、郷に入れば郷に従えって言うしな……。分かったよ、アルの意見に賛成する。報酬はおれとアルの二人で分けるんだな」
どうやら納得してくれたようだ。
だが、話はこれで終わりではない。
「それなんだが、ユースケ、おれに雇われるっていうのはどうだ?」
「は? どういう事だよ?」
「今ユースケはおれに大金を借金している。そしてまた借りようとしているだろ?」
「ぐ、悪いとは思ってるんだけど……」
「そこでだ。今回の移動費は借金じゃなくておれが全部持ってもいい」
「ほんとか!?」
「ただし! おれに雇われる事が条件だ!」
「そこで雇われる事に繋がるのか……。だけど、どうしてだ?」
「おれに雇われているという事で、移動なんかに掛かる金は諸経費として、おれが払うという事だ。もちろん給金も出す」
そう。これこそがおれが思いついた考えだ。
給金を出す代わりに、稼いだ金はおれが貰う。
ユースケは安定して金を得る事になるが、おれは博打の要素が強い。
稼ぎが良ければ儲かるが、稼ぎが悪ければ赤字だ。
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