二つの異世界
「転生……した……?」
「そうだ。おれは前世で死んだ……のかどうかは分からないが、この世界にアルグラウン・フォングラウスとして誕生したんだ」
生まれたての頃は、何が何だか分からなかったな。
今のユースケ以上に混乱していただろう。
まさか"不死"の魔法を使ったら生まれ変わるなんて想像もつかないし、おれが前世で赤子だったのは何百年も昔の話だからな。
当然普通の赤子とは行動が違って、気味悪く思えただろう。
生まれた時、泣かなかったらしいしな。
前世なら悪魔憑きと恐れられただろう。
愛情を注いで、育ててくれた家族に感謝だな。
剣術の訓練は厳しすぎたが。
「そうだったのか……。ならアルも、日本人……なのか?」
「いや、悪いが話を聞くに、おれとユースケのいた世界は違うようだ。おれは前世では、サーバス王国という国の王家公認魔法使いを数百年やっていた。だが、"にほん"も"よーろっぱ"も"あめりか"も聞き覚えがない。たぶんだが、違う世界なのだろう。ちなみにおれの前世の名前は、ゲルイド・シンフォニーだ。まぁ、どうでもいいことだがな」
「魔法使い……それに数百年も生きて……。えーと、ゲルイドさん? 今の話を聞いて、おれも別の世界だって確信したよ。なんたって、おれが住んでた世界じゃ、魔法なんてなかったからな。人間の寿命も、よくて百年そこそこだったし」
「アルでいい。今更前世の名前に拘ろうとは思わんしな。それで、ユースケのいた世界には魔法がなかったのか。なら、魔術はあったのか?」
「えーと、魔法も魔術も同じじゃないの? おれのいた世界にはそんなのなくて、科学が発達している世界なんだ。自動車っていう、馬がいない馬車とか、飛行機っていう鉄の鳥? とにかくそういう乗り物があったとか。あ、そうだ! 月にだって行くことが出来るんだぜ!」
「月か、それはすごいな」
月に行くだなんて考えた事もなかった。
月とは夜空にあるもので、人間がたどり着けるような場所じゃないと思うんだけどな。
魔法でも無理そうだ。
本当の話なのだろうか?
本当の話なら、その"科学"というものも、魔法や魔術の一種なのだろう。
そうとしか考えられない。
「それに、離れてる場所の人と瞬時に話せる電話ってものがあったり、世界中の人と繋がれるインターネットってのもあるし、それに……」
「分かった分かった! ユースケの世界の話は後で詳しく聞かせて貰うとして、今は何故この世界にいるのか経緯を説明してくれ」
召喚された勇者との関係も気になるしな。
それに召喚が魔術によって行われたものなら、その魔術の詳細も知りたい。
いい研究材料になりそうだ。
「あぁ、分かった。その代わりアルのいた世界のことも教えてくれよ?」
そう言って、ユースケは召喚された経緯を語り始めた。
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