砂蜥蜴
おれはサンドリザードの討伐依頼を受ける為に、黒髪黒目の少年ユースケと一時的にパーティを組み、他愛もない話をしながら東の街道を歩いていた。
よく襲撃に合うポイントがあるらしいので、そこに向かっている所だ。
「なぁ、アルは貴族様なんだろ? なんで冒険者なんかやってるんだ?」
「貴族といってもうちは末端の男爵家だからな。それに次男だし。兄貴は家臣団に勧めてくれたけど、それよりか冒険者になって一旗あげたいだろ?」
「そうだな。やっぱ男なら冒険者を目指すよな! 一流冒険者になって可愛い女の子でパーティ組んだり、奴隷ハーレム作ったりする事こそ男の夢だよな!!」
「いや、それはいまいちわからんが……」
「まぁ、てことでアルとのパーティは臨時だ! でもランクを上げて可愛い女の子の仲間が見つかるまでは、たまになら組んでやってもいいぞ」
「それは……すまないな」
こういう時なんて返せばいいのだろう。
あまりに明け透けな申し出に、思わず言葉が詰まった。
だが、まぁ、ユースケは性格にこそ難があるが、どうやら根は悪い奴じゃなさそうだ。
「そういえば、ランクを上げるってことは、ユースケはこの街を出ていくのか?」
「へ? なんで?」
「だってこの街周辺には三等級へランクアップするための魔物はいないだろう?」
「え? そうなの?」
「そうだぞ。だから三等級を目指す冒険者はこの街を出ていくようだ。おれももうしばらくしたら、迷宮都市コサイムへ行こうと思っている」
「迷宮都市……やっぱこの世界にはダンジョンもあるのか……。よし! おれも迷宮都市へ行くぜ! アル! ちょうどいいし一緒に行こうぜ!」
なにがちょうどいいのか分からないが、まぁ確かに旅は一人より二人の方が安全だ。
だがそれより今は……
「その話はあとだ。おいでになったぞ」
「え? ってうわっ!?」
街道の右の方から砂煙とともに、四足歩行の茶色色をした生物が走り寄ってくる。
あれがサンドリザードか。大きいな。
確か本から得た情報だと、サンドリザードは体長二メートル程のはずだ。
それがあいつは倍の四メートルはあるな。
特殊個体か、なるほど。
「うおっ、でっけー!!」
「感心している場合じゃないぞ。来るぞっ!!」
サンドリザードは接近すると、走り続けたまま口から長い舌を伸ばしてきた。
「あ……っぶね! なんだよこのスピードは!?」
それをおれとユースケは間一髪で避ける。
あの巨体にこの速さ、そして伸びる舌か。
舌で巻き取られたら一口で丸呑みにされて、一巻の終わりだな。
やっかいだな、この魔物。
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