新しい依頼

 ランクアップしたあの日から十日間。

 おれは毎日オークの討伐依頼を受けていた。


 四等級向けの依頼は流石に五等級のドブ掃除や迷い猫探しなんかじゃなく、護衛依頼や希少な薬草の採取など、ちゃんとした冒険者らしい仕事があったが、素材の換金まで考えると、報酬の面で魔物の討伐依頼の方が勝っていたからだ。


 オークの他にも灰色鼠グレイラット戦狼ウォーウルフの討伐依頼もあったが、グレイラットは下水道にいる魔物らしく、そんな汚そうな所には入りたくなかったし、ウォーウルフは南の森に生息しているので、エリスからの忠告もあって入らないようにしていた。


 だが、そろそろオーク討伐も飽きた。

 違う依頼を受けてみよう。

 そう決意して冒険者ギルドの依頼表を見ると、目新しいものがあった。


砂蜥蜴サンドリザードの討伐か。報酬も良いしこれにするか」


 常時依頼ではないので依頼表を剥がし、エリスの所に持っていく。

 ちょうどすいているようだ。


「これを受けたいのだが」


「おはようございます、アルさん。サンドリザードの討伐ですか。すみませんがこちらはパーティ向けの依頼となっております」


「パーティ向けの依頼? そんなこと書いてなかったが……」


 どこにもそんなことは書いてなかったはずだが。

 ちなみにパーティとは、冒険者同士が組んで作るチームのようなものだ。

 だいたい二人組から五、六人くらいまで人数は様々だ。

 このパーティが大規模になって、十人を超えるようだとクランと呼ばれるようになる。


「あ、すみません。どうやら職員の不手際があったようです。実は最近、東の街道の付近に、はぐれのサンドリザードが住み着いたらしく、行商の商人の方々に被害が出ているそうです。それで駆除してくれと依頼があったのですが、どうやらそのサンドリザードは特殊個体らしく、三等級向けに依頼を出したのですが、ついこの間三等級だった方は他の街へ行かれて、もう一人の三等級冒険者のガントルさんは最近見かけませんし……」


 あー、なるほど。

 確かにラースは周囲にランクの高い魔物がいない、比較的平和な街だからな。

 依頼も四等級向けのものばかりだ。


 ほとんどの冒険者がオーク討伐で満足しているし、高ランクを目指すものは他の街へ移るだろう。

 三等級へランクアップする為の魔物もこの街周辺じゃ滅多に出ないしな。


 そう考えるとガントルは貴重なこの街の戦力だったのだろう。

 あの偉そうな態度にも納得がいくな。


 というか、おれがガントルをカエルにしちまったせいで、依頼を受ける者がいなくて困っているということか。


「それで、このまま三等級向けに依頼を出していても塩漬けになりますし、商業ギルドから催促もきていますので、一つランクを落として四等級の依頼とする代わりに、パーティ向けの依頼となった訳です」

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