プロローグ2
「はやく儀式を完成させねば。死を超越した完全なる不老不死の魔法。"不死"の古代語は研究によって解読できた。魔法陣も準備した。そして、馬鹿な国王が"生贄"まで用意してくれた……くくっ」
力ある魔法使いたちは長命である。
長生きといった言葉で表せないくらいに何百年、もしかすると何千年と生きることが出来る。
それはひとえに不老の魔法のおかげだ。
"不老"の古代語が解明される前の魔法使いたちは、"健康"の魔法によりよくて百年程度しか生きていなかったという。
しかし、力ある魔法使いたちもいくら"健康"と"不老"の魔法を使っていても、永遠に生きる訳ではない。
それはこの戦争が証明した。
そう、"不死"ではないのだ、今までは。
その"不死"たる古代語をゲルイドは発見したという。
古代語をより多く、正しく理解するものこそが多くの魔法を使える力ある魔法使いの条件だ。
そしてゲルイドは"不死"たる古代語の単語を解明した大魔法使いだ。
"不死"を解き明かした、つまり"死"の古代語を使えるということだ。
「ふむ。そろそろいい頃合いか」
ゲルイドの召喚した悪魔の軍勢は押され、多くのものが消滅していた。
それと共に徐々に戦線を上げてきた王国軍は、知らぬうちにゲルイドが構築した巨大な魔法陣の中に入っている。
「"不老"の魔術は短命な獣などでも、その都度生贄に捧げればその生贄の残りの寿命分命を長らえさせたが、"死"は一度きり。"不死"になるには一度に多くの長命な命を捧げねばならんとは厄介だが、それもこれで……」
ゲルイドは巨大な魔法陣の中央にある小さな魔法陣の中に入り古代語を唱える。
『
その途端、外側の大きな魔法陣が薄紫色に輝きだす。
「おぉ。これが"死"の魔法! すさまじいぞ!」
魔法使いを排除しようとする側の王国軍は、当然ながら魔除けの魔法など施しているはずもなく、次から次に糸が切れたようにバタバタと倒れいていく。
そして兵士たちの体から魂とでもいうべきものが、ゲルイドが立っている小さな魔法陣に吸い込まれていく。
外側の魔法陣の内側に入った兵士たちが全員事切れた頃、ゲルイドの足元の魔法陣が虹色の光を発する。
「くくっ、これで私は"不老不死"、完全なる存在になれる! 死ぬことがなければもはや臆する事はない! 不死の肉体とこの英知があれば!! 魔の深淵を解き明か」
そこで、ゲルイド・シンフォニーの意識は途絶えた。
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