第19話 お別れの夕食会を自宅ですることになった!

木曜日の朝、7時30分にホテルの彼女たちの部屋に電話を入れた。今日は1日ワシントン観光ツアーに行く予定になっているので、朝寝坊していないか心配だったからだ。紗奈恵が出た。今起きたところで、すぐに準備して8時にロビーに降りていくと言っていた。


8時にロビーで待っていると、いかにも眠そうな二人が降りてきた。


「そうとう疲れているみたいだね」


「そうでもないけど、昨夜は二人ともぐっすり眠れたわ。時差にも慣れたみたい」


「行き帰りは眠っていればいいから、でも迷子にならないでね」


「大丈夫よ」


そう言って二人はツアーの迎えのバスに乗り込んでいった。


午後7時に紗奈恵からホテルに戻ってきたとの連絡があった。明日はニューヨーク市街でショッピングをすることになっている。疲れているようなので、ホテルには10時に迎えに行くことにした。紗奈恵もゆっくり寝られるのでそれがいいと言った。


◆◆◆

金曜日、朝10時にホテルのロビーで待っていると2人が現れた。時間にゆとりがあったせいか、元気を取り戻しているように見えた。今日はニューヨークを見物できる最後の日だ。


「昨日のワシントンツアーどうだった?」


「ホワイトハウスを見られたし、博物館や美術館も多くて、時間が足りないくらいだった。やはり行ってよかった。写真もたくさん撮れた」


「お天気に恵まれました。今日がニューヨーク市内を見て回れる最後の日ですね」


「だから、ショッピングに当てた。お土産や衣料などを買うのなら、適当な店を案内するから」


「ガイドブックで調べてきましたからお願いします」


「今夜の夕食は何がいい?」


「もう、こちらの食事は食べ飽きたわ。市瀬君はいつも何を食べているの?」


「ここへきてすぐは要領も分からないので適当な店に入っていた。この前に案内したレストラン、中華料理の店、それから日本料理店」


「日本料理店もあるの?」


「結構探せばあるけど、高級レストランを除いて、味はいまいちだ。それに値段も安くない。最近は夕食をほとんど自炊している。と言ってもご飯を炊いて、日本の食材を買ってきたり、デリでできあいの料理を買ってくるか、スーパーで肉や魚を買って焼いたりしているだけだけどね」


「へー、自炊しているんだ」


「市瀬君はどんなところに住んでいるの?」


「ここから歩いて10分ほどのコンドミニアムの12階だけど、広さはワンベッドルーム。日本でいうと1LDKの賃貸マンションといったところかな」


「見てみたい」


「それなら、今夜の夕食は僕のところで食べるのはどうかな? 食材を買って帰って、僕も何か作ってあげよう。そうすれば費用も格安だし」


「そうしましょう。一緒に食事できるのは今日が最後だから、私たちもお手伝いします」


◆◆◆

それから彼女たちのショッピングに付き合った。米国のブランドというと僕の知っているのは「ティファニー」「コーチ」「ポロラルフローレン」「ハンチングワールド」くらいだ。彼女たちはブランドに興味をしめさない。確かに日本のどこにでもある。


婦人服をみたいというので、デパートをいくつか回った。デパートならブランドがそろっているから、見て歩くには効率がいい。こちらの婦人服はどれもシンプルな色と形が多い。花柄などはめったにない。


女性のショッピングは時間がかかる。じっくり待つにかぎる。二人とも何着かを仕入れて気が済んだみたいだった。


今は東京でも地方都市でも世界中のブランドが手に入る。まして通販を使えばいながらにして購入が可能だ。手に取って見られないだけで、リスクはあるが、注文してから数日で手に入る。旅行でショッピングはもうないのかもしれない。


昼食は町のコーヒーショップで簡単にすませた。朝食はどうしているのか聞いたら、始めはホテルの食堂で食べていたが、高価だし、慣れてきたのでホテルのフロントで近くのコンビニやスーパーを教えてもらって、二人でパン、牛乳、フルーツ、アイスクリームなどを買ってきて食べているということだった。慣れてきた証拠だ。ただ、時差にも慣れてきたころに帰国することになる。


それから買ってきた物をホテルにおいて、一息ついたら、3人で夕飯の材料を買ってその足で僕のコンドミニアムに向かうことにした。


3時に僕はホテルへ二人を迎えに行った。二人は軽快な服装に変えていた。これから食料の買い出しだ。お酒は買い置きがある、ワイン、ウイスキー、缶ビールがあるから、必要なのはソフトドリンクだ。日本の食材も買い置きが3人分くらいならある。


まず、デリへ行って、総菜とサラダなどを調達することにした。そこで彼女たちに食べたいものをチョイスしてもらえばいい。行きつけのデリへ彼女たちを連れて行った。


「じゃあ、それぞれ食べたいものをそこのプラのパケージに取ろう。それをシェアしよう」


「混ざってもいいの?」


「まとめて重さをはかって値段が決まるから」


「そうなの?」


僕は肉料理とサラダを取った。それを見て彼女たちはカットしたフルーツを選んでいる。持ち帰ってシェアすればちょうど良いくらいの量を入れていく。


支払いを済ませて今度はスーパーに寄る。ここでアイスクリーム、ソルベット、飲み物と3種類ほどチーズを買った。これで、食べ物は十分だ。3人だと買い物も楽だ。僕は買い物するときは大きなリュックを担いで行っている。1週間分を買うとなると結構な量になる。


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