第4話 2030
「MKウルトラ計画」
死角から強烈なフックが滑り込んで来た。同僚がフリックし視界に差し込む。
「洗脳、ですか」
常套手段だよ、と男の口調は事務的なそれ。
「昨今の、AIがAIを使役するスマートデジットとは凡庸な、枯れ果てた、ね」
傍らのモニタでは犯人、現行犯射殺、つまり被害者が常に変わらぬ情熱的な口調で語り続けていた。
プエルトリカン、プアサウス。
彼が主張する処に因ると、現在の海洋、水質汚染はかなり深刻である、らしい。
つまり薬害なのだと。
薬とは、毒である。
それは副作用、と呼称される。
都合の為の不都合。
だがそれも服用者にとっては、自己責任ではある。
が。
薬は最終的には排出される。
海に流れ、蒸散し舞い上がり、大地に振り撒かれ、また海に戻る。
それは1年で、10年で、100年で、地球全土で、いったい何トンの散布となるのか。
永年メキシコ湾で代々漁業に従事してきた彼の実家は、廃業に至ったのだと、養殖ではない、野生のサカナは最早生物濃縮でクスリ漬け、商品にならないのだ、と。
現実のデータは少し異なる。
彼の実家は裕福な網本、大富豪で、彼は放蕩息子の成れの果ての北米に巣くうヤクの売人。
これは天誅だと画面の彼は息まいている。
しかして、襲撃対象となったのは、全米ライフル協会であった。
総てがちぐはぐ、しかし演出されたものであるなら道理。
世界の「抗生物質汚染」、今すぐ対策を、最新研究
72カ国91河川の6割以上で検出、基準値の300倍超の場所も
2019.05.31
ドラッグが一大産業である事、その発言力の絶大に異論は無い。
「反対物は反対物を治療する」
ディープスロートの口許が再び猛禽のそれを真似た。
事件の前年、薬品業界は自然保護団体から猛烈な批難、薬は患者も地球も蝕む、という、不都合過ぎる真実で小突きまわされ閉口していた。
そう、銃規制運動と時を同じくして。
そして、不幸にも、薬禍撲滅運動の指導者も乱射事件の犠牲者となっている。
「銃乱射事件の現行犯、狂人の戯言、劇薬で以って事実を捻じ曲げようと」
「ノーコメント」
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