愛せども報われず
「また振られたんだって? しかも悲鳴まで上げられちゃって、哀れなもんだね」
「ああ……これでもう何回目だろう。何がいけないのかな、俺はこんなにあの子のことが好きなのに」
「諦めな。だいたい、俺達みたいな汚れきった奴らの手が届くような相手じゃないのさ。相手は超名門のご令嬢だぞ」
「そりゃそうだが――好き合うくらい許されたっていいじゃないか」
「住む世界が違うんだよ……」
「界までは違わないさ! 希望はある!」
「強情だな君も。あの子のどこがそんなに好きなんだい」
「そりゃ、いい香りがするし、髪はつやつやしてるし、きめ細やかな肌に触れた感触は天国のビロードに寝転んだようだし……あの子を見て好きにならない君の方がおかしいんだ」
「俺だって好きさ。だがね――っておい、なにかにおわないか」
「ほんとだ……これは、ああ、悪夢がよみがえる」
「きっと毒ガスだぜ……どうも体が痺れて来た……」
「僕もだ……ああ、きっとあの子がやったんだ! なんだってあの子はこんなに僕のことがきらいなんりゃろう」
「それはさ……友よ……きっと、胸板の薄いちんまい身体じゃ、あの子を抱きしめられないからだな」
「ああ、来世はせめて六本足じゃありやせんように……」
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