第13話 吾輩はニャンである!


 吾輩は猫である。名前は多分 “ニャン”。近所の子供達がそう呼んでいた。

 どこで生まれたのかは見当もつかぬが、気が付いた時にはもうこの公園の片隅でうずくまっていたのを覚えている。所謂、地域猫と言う奴だ。

 公園のベンチの陽だまりでお昼寝し、夜の街を闊歩する。

 そして、獲物を狩って、恋をする。

 それが猫と言うものだ。


 何? 自由気ままに生活しているだって?

 はたして人間は知っているだろうか?

 実は、猫はすべからく神様から託された使命を帯びている事を……。


 それは……“人間の監視” である。


 時には手足にすり寄り感触を確かめ。時にはその手を逃れ遠くから黙視する。そして、人の食べているのを欲しがるのもこの使命を全うするために行う行為なのである。

 人の出したごみ袋を開いて観察したり、息をひそめて台所へ侵入したりするのも使命の一つなのである。


 これらは決して楽な仕事ではない。何せ神様から託された重要な任務なのだから。


 だから、自らの技術を磨き上げ日々精進をしている。

 誰にも悟られることなく移動する忍び足。

 目にもとまらぬ速さの猫パンチ。

 そして、全てを魅了するゴロゴロ。

 これらは人間を監視するために必要なものなのだ。決して自由気ままに生きている訳では無い。

 むしろ日々精進を怠らず寡黙に生きているとさえ言っていい。それにしても、この陽だまりは気持ちいい……。



 そして今、君の足元でニャンと鳴く。


 そのパン、吾輩にも分けてくれよ!

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