第552話 『これが【神】のシナリオよ』

  

 ____そして時が経ち……



 「クックック、所詮【勇者】と言えど、この程度ですぞ」


 「フシュルルル!」


 

 薄暗い洞窟内に倒れるリュウト達パーティーの面々と、まだ小さなユキの姿が


 「まさか……洞窟での冒険者行方不明事件……なぜ、あなたが……」


 「リュウト殿、お前はいい道化でしたぞ、犯人が私とも知らずに仲間がどんどん罠にハマって行く様を見て涙を……クックック……「ムラサメさん!俺は絶対犯人を許さない!」ですぞ!ブフォぉぉふはっはっはっは!思い出すだけで笑えるですぞ」


 「くっそ……」


 「まだお前は生かしておく価値はあるですぞ」


 ムラサメが指を鳴らすと巨大な魔法陣が発動して魔法機械が姿を現す。


 「こ、れは?」


 「この魔法機械は大量の魔力と引き換えに歳を若返ることが出来る装置ですぞ!」


 「お前の狙いは、不老____」


 そこでリュウトは気絶した。


 「チッチッチ、私が使うのではない……さて、と」


 「ひっ!」


 絶望して腰が抜け、その場に座り込んでいたユキの方を向き、近づく。


 「まさか、ご近所様だったとは思わなかったですぞ、あの老ぼれと一緒に住んでいたとは」


 「がっ」


 容赦なくユキの首を掴んで持ち上げる。


 「がっ……はっ……」


 苦しくなったユキは白目になりながら漏らす。


 「汚いですぞ、まったく、私がいるからついて来ても大丈夫などとリュウトが言ってたですぞが、余計な手間を増やしただけですぞ」


 そのままムラサメは1つのカプセルにユキをいれた。


 「その髪の色、あのお姉さん以外にしているのを見ると腹が立つですぞ」


 そう言いながら装置を起動させる。


 「ぐぼっ!がぼぼ!」


 中に液体が満たされ、ユキは苦しみ出した。


 「クックック、この装置は身体のあらゆる部分から魔力を吸い出す、さぞ苦しいでしょうな」


 ユキの髪は全て抜けていき、皮膚が溶けて行くのを背にリュウトを次のカプセルに入れようと担いだ所で


 「フシュルルルルル!フシュルルル!!!!」


 蜘蛛蛇が騒ぎ出した。


 「どうしたですぞ、そんなに騒い……で」


 蜘蛛蛇とムラサメは言葉を失い、担いでいたリュウトを落とす。


 なぜなら



 「な、なにこれ!?」



 そこには、あの日居なくなったお姉さんがあの日の姿のまま、そこに居たのだ。

 

 

 「お、姉さん……?」


 「!、あなたは!アバレー代表騎士!」


 ムラサメの鼓動が早くなる。

 

 「お姉さん……お姉さんお姉さん!」


 「な、なに?」


 「覚えてないですぞ!?あの時の事を!」


 「え?」


 「ほら!蜘蛛蛇も!」


 「フシュルルル!」


 「ま、魔物!?どうして!?懐いてる!?」


 まるで状況を解っていない【勇者アオイ】は困惑している。


 だが、愛は盲目、自分の都合の良い様に考えて信じる者も少なくない。


 「そうか!きっとお姉さんはどこかで頭をうったんですぞ!その時に記憶が飛んだんですぞね!」


 「何を言ってるんですか!?俺はそんなんじゃ____!!!!!!!」



 そんなやり取りの中、アオイはカプセルの中を見た……いや、見てしまった……



 「ユキちゃん!!??」


 その場から急いで走ってカプセルの近くまで行く。


 「ユキちゃん!今、今助けるからね」


 中でほとんど皮膚が溶けて、もはやゾンビの様になっているユキをカプセルを割って救出するが息がない。


 「ユキちゃん!ユキちゃん!」


 「お姉さん!そんなものより僕の話を聞いて欲しいですぞ!」


 その言葉がアオイの逆鱗に触れる。


 「…………そんなもの?】


 明らかに声色が変わったが、それすらもムラサメには耳に心地よく聞こえていた。


 それもそうだ、あの日からムラサメ達には敵意など恋の邪魔になる者はアオイに対して排除されていたのだから。


 「はいですぞ!そんな訳の分からない小娘なんて放っておいて、僕があの日からお姉さんをどれだけ待っていたか____んぐ!?」


 一瞬で間合いを詰めたアオイはムラサメの口を塞いだ。


 【お前がどれだけ俺の事を思ってくれてるか知らないけどな……俺はお前の事は全く知らないんだよ、だからお前の家族やお前がどうなろうがお前の事情は知った事じゃない……お前には地獄を見せてやる】


 「あぁ……お姉さん……」




 

 【さぁ、料理の時間だ】

 




 そこからはまさに地獄絵図だった。



 【勇者アオイ】は抵抗しないムラサメの四肢をもぎ、見える位置で乱暴にぶつ切りにしていく。


 そして、蜘蛛蛇も例外なく、大量の包丁を刺されゆっくりと捌かれて行った。


 

 だが、そんな事をされていても____




 「あぁ……綺麗です……ぞ」




 ムラサメは久しぶりに会えたアオイを目に焼き付ける事を優先しながら死んでいくのだった。




 【まだ、まだ足りない、足りないんだよ!おさまらねぇ!】






 アオイの思いに応えるかの様に【糸】は円を作って“過去へのゲート”を開いた。

 






 そして、彼女はムラサメの母親も殺し____












 【過去】の食卓に並べた。










 

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