第544話 キール あーたんvs

 《ステージ 鬼山地獄》


 「やはり、出口はない、か」


 下から棘のように出てきている円錐の足場を移動しながら一直線に移動しているがどこへいっても同じ景色。


 「さらに天気が逆転して太陽の位置も動かない、ここはアオイが作り出した簡易的な世界と言うことか」


 普通はあり得ない、普通、ならな。


 「『アオイ』もしも魔神を倒したことで覚醒したならば私達は今、世界そのものと戦っていることになる」


 「そう!世界ですぞ!そして我が君こそ世界!」


 「その声!ムラサメか!」


 「いかにもですぞ」


 どこからともなく1つの足場の上に出てきたのは仮面の男、ムラサメ……


 「面白い組み合わせですぞな、元グリード代表と元アバレー代表」


 「もう、魔族という者が存在した今、国など意味をなさない、いや、元々私達はカゴの中に居ただけだった」


 「そう、その考えが正しいですぞ、ですぞが、わがはいとアナタでは決定的な違いがある」


 「違い?」


 「仕えるべき存在を失っている」


 「…………」


 「騎士と言うのは己を守るために剣を振るうのではないですぞ、時には己を犠牲にしてでも剣だけは生きている、それが騎士」


 「何を言ってるか分からないな」


 「これだから文面の奥を探らず無い頭を動かそうともしない人間という馬鹿な生き物は……」


 「まるで自分が人間じゃ無い様な言い方だな」


 「正解ですぞ、私は人間では無い」


 「!?、魔族か!?」


 「それは不正解ですぞ、魔族でも無い」


 「人間でも魔族でもない?」


 「…………おしゃべりはここまでですぞ、どうやら役者が揃ったみたいですぞ」


 「っ!?」


 横から猛スピードで飛んできた白い塊を攻撃かと思い盾で防ごうかとしたが、私は受け止めた。


 「くっ!」


 吹き飛ばされながら徐々に勢いを殺し着地する。

 白い塊、その正体は魔物……アールラビッツ。


 「大丈夫か!」


 確か名は……


 「あーたんくん」


 「う、ぐぅ……」


 口から血が出ているが外から見る限り目立った外傷はない、つまり、内部がやられている。


 「待っていろ、今クロに貰った魔皮紙を__」


 !?


 「無い……」


 「ここは『アオイ』様の作ったバトルステージでなまし、魔皮紙など無用なものはここに送られる時に排除されてるに決まってるでおくんなまし」


 変な言葉遣いをしながらムラサメの隣に着地したのはムラサメと同じように仮面を付けた黒い着物に身を包み、両手に扇を持った女性。


 「貴様は誰だ!」









 「我が名は『ラクネ』、ムラサメ様を主人様とするただの魔物でおくんなまし」








 


 

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