第265話 メロクスコリピクス

 「あー?」


 アオイの先輩、カブの目の前には黒い体調二メートルのサソリがいた。

 しかし、この世界にサソリはいないそいつの正体は。


 「『メロクスコリピクス』......なんでモンスターがここに」


 『メロクスコリピクス』尾に強力な毒をもったモンスターで刺されたりその尾に生えてる針でかすり傷をつけられるとそこから一時間で毒が周り死に至る。

 直ちに毒を無効化する魔皮紙や魔法を使わないといけない。


 

 しかし、ここは町の中、モンスターなど居るはずがないのでカブ達はもっていない。


 だが


 「おい!マキとか言ったか!緊急事態だが俺達アドベンチャー科がモンスターにびびってどうすんだよ!」


 「馬鹿を言え!私がこの程度でびびるわけねぇだろ!」


 二人はそのモンスターに対して構える。

 そう、偶然にも二人が入っているのは《アドベンチャー科》。

 将来、冒険者となる者達だ、これは実戦と言うわけだろう。


 メロクスコリピクスは二人を見るが【まるで探している人物が違った】かの様に周りを見回している様に見える。


 「あー?てめぇ......俺達を無視するとはいい度胸じゃねーか!」


 カブは距離を詰め隙だらけのメロクスコリピクスの尻尾を掴む。

 メロクスコリピクスの最大の武器は尾の猛毒。

 つまりそれを無効化するつもりなのだ。


 それを見てマキも距離を詰め


 「はぁぁぁあ!!!」


 思いっきり尻尾に蹴りをいれた!だが!


 「くそ!」


 尻尾は千切れることなくバネのようになっただけだ。


 「......!」


 メロクスコリピクスはその攻撃でようやくカブ達を敵と認識し、尻尾を振ってカブを引き剥がす。

 カブは着地がとれず、背中を地面でこすりながら距離を離され、マキはカブの近くに行く。


 「大丈夫か?さっきと逆だな」


 マキは手を指しのべてカブを立たせる。


 「あー......てめぇの蹴り、威力がなさすぎるだろ」


 「良く言う、切断武器を持ってない私たちであの尻尾を斬るのは無理だろ、お前の考えもおかしいんだよ!」


 そう、お互いがまだ冒険者ではないので本物のモンスター相手には不慣れなのだ。


 「あー、だがあっちはやる気になったみたいだぜ」


 メロクスコリピクスは二人を向いて大きな鋏と尻尾を向けて威嚇している。


 「なぁ、カブ、なんでお前は逃げないんだ?」


 「あー?」


 カブはメロクスコリピクスの後方を見る。

 そこには美しい女が二人、後輩達がこちらを隠れて見ている。


 「これくらいのモンスター素手で倒せなくてダイヤモンド冒険者になれるかよ」


 「はっ!そうだな!」


 メロクスコリピクスはミクラルの近くに生息するモンスターでギルドからはプラチナ冒険者が担当するモンスターだ。

 冒険者の卵である二人で素手で倒すのはまず無理なのだが......


 「くるぞ!」


 メロクスコリピクスが動き尻尾でカブを突き刺そうとするが避ける。


 「で!逃げないとするとどうする!?」


 「あー......一応聞くがお前、今なんの攻撃魔皮紙もってる?」


 「馬鹿いえ、喧嘩をそんなもの持ってきて勝っても意味ねぇから持ってねぇ」


 「あー、そうだな、俺も持ってねぇ」


 二人とも何もない。

 唯一【プラスフィジカルアビリティ】で身体能力が強化されているとはいえ、相手はモンスターだ。


 「二人とも何も持ってない、じゃぁ、やることは一つだな」


 「あー、そうだな、そっちの方が俺たちにあってるな」


 「「ぶったおれるまで相手を殴る!」」


 二人はメロクスコリピクスを中心にそれぞれ左右に動く。

 メロクスコリピクスはまず、マキの方を向く。


 「はっ!私みたいな女に興味津々かい!うれしいことだね!だけど私はあんたみたいに後ろが緩い女じゃないんでね!」



 「......!!」



 後ろからカブがメロクスコリピクスの細い足に拳をいれる!

 メロクスコリピクスは不意に打たれたその一撃で体勢を崩しその隙にカブは二撃目を入れると一本足が折れそこから紫の体液がドロッと飛び出る。

 そして尾がカブに攻撃してきたのでカブは避けると、メロクスコリピクスはカブに向く。


 「あー?どうした?今度は俺か?生憎だが浮気性の奴は興味ねぇ!」


 「!!!!」


 そして、当然背を向けられ隙だらけになったメロクスコリピクスの足にマキがかかとおとしを決め一撃で細い足が折れる。


 たまらずメロクスコリピクスはその場で尾を振り乱し暴れ狂うが冷静にカブとマキは射程範囲から出て合流する。


 「おいおい、流石はモンスター......足を二本折られてるのにピンピンしてやがる」


 「あー、だが、後四本、全部折っちまえば何もできねーだろ」


 「カブ!お前の魔力はどんくらいもつ?」


 「あー......持ってあと一時間ってとこだな」


 「余裕じゃねーか、行くぞ!」


 「あー?お前こそへますんじゃねぇぞ!」


 そして次は落ちていた手のひらサイズの石をカブは拾い上げて尾を振り乱してるメロクスコリピクスに投てきする。

 【プラスフィジカルアビリティ】で強化され投げられたその石は時速160キロほどで風を切りながらメロクスコリピクスの額の甲殻にぶつかり、「カッ」と言う音と共に甲殻を少し凹ませる。

 

 「へーい!もういっちょ」


 その石が甲殻とぶつかり真上に飛んでいるのをマキはキャッチし、空中で身体をひねり投げると一撃目と同じ甲殻の位置にあたり石はそのままメロクスコリピクスにめり込む。


 【飛び道具】があることがわかったメロクスコリピクスは残りの足でマキの着地するところへ行こうとするが。


 「あー?させねーよ!」


 またカブは足を狙い殴り、メロクスコリピクスは体勢が崩れその間にマキは着地する。


 「はぁ......はぁ......やるじゃねーか、カブ」


 「あー?」


 おかしい、此方側は明らかに攻撃を受けていないのにマキの息があがっている。


 「おい、息があがってんぞ」


 「うるせぇ......!ちょっと興奮してんだよ」


 「......」


 「あ!ちょ!」


 カブはマキの特効服をひっぺがすとマキの上半身はサラシを巻いただけの姿になる......そして特効服で見えなかったがマキの肩の部分にはメロクスコリピクスの尾が付けたかすり傷があった。


 「あーてめぇ!いつくらってやがった!」


 「............」


 「あー?まさかあの時か」

 

 心当たりがあるとすれば一番最初にカブを庇ったとき。

 そうすると残り時間もそう長くない。

 

 「ちっ!」


 「私は大丈夫だ!......くっ」


 マキの顔色はどんどん悪くなっていく。

 

 「うるせぇ!下手な嘘つくんじゃねぇ!ここは俺が隙を作るからさっさと保健室に急げ!」


 「私はまだ!」


 「うるせーんだよ!とっとと言うこと聞け!俺に負けたんなら俺の言うことを聞くのが道理だ!」


 「............」


 マキはそれを言われると黙って泣きそうな顔になり頷く。


 しかし、メロクスコリピクスはプラチナ冒険者がパーティーを組んで倒すような相手だ。

 カブ一人でなんとかなる相手ではないのは二人には解ってる。


 「ど、どうすんだよ......じゃぁ私が行った後は」


 「あー?考えてねぇ!」


 カブは拳を握り力を込め、渾身の一撃を決めようとメロクスコリピクスに目の前からまっすぐ突っ込んでいき。

 











 そして、その拳はメロクスコリピクスを包み込んだ【土の壁】に遮られた。





 「あー?」


 「先輩!今のうちです!」


 奥から隠れていた、金髪のこの世の全てを持っている美女。

 美の神をそのまま人間にしたような女性。


 アオイが手をふっていた。


 「あ!ちょ!おろせ!」


 カブはメロクスコリピクスが土の壁に包み込まれた隙にマキを背負いアオイの元まで行く。


 「アオイ!お前がやったのか!」


 「い、いえ、これはルカがやりました!」


 木陰を見るとブイサインを出してる第2の美女がいた。


 「はんっ!助かったぜ!今すぐここを離れてこいつを保健室につれていって誰か呼んでくるぞ!お前たちも早く来いよ!」


 そういってカブはマキを背負って全速力で走る。

 プラスフィジカルアビリティ中の全速力なのでアオイ達を置いていくことになるがマキを助けるのには時間がなかった。


 「ルカも早く逃げよう!」


 「うむ、逃げるのじゃ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして、アオイ達も居なくなった後。


 土の壁が解かれると。


 内臓をクリスタルで貫かれ息絶えて動かなくなったメロクスコリピクスの姿があった。



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 武器


 冒険者は基本武器と魔法で戦う。

 武器は様々な種類があり自分にあったものを使用する。

 武器はモンスターの素材により能力が発揮できる。



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