第129話 モンスターの名は『ブルゼ』!


 「と、まぁ、そんな感じだよ」


 「……なるほど」


 外の状況はわかった。

 子供達を連れて歩かなくて正解みたいだ。


 「ちょいと魔法通信で今から国王と連絡を取ってくるよ」

 

 そう言うと食堂を出ていく代表騎士。

 

 「私達も行きましょう、なにか情報があるかもしれません」


 「……うむ」


 ロビーに付くと代表騎士は大きな胸板から通信魔皮紙を取り出し映像が現れる。


 {おお、ナオミ殿、無事だったか!連絡がないので心配したぞ!}


 そこには王冠を被った20代後半の茶髪の男性が居た。

 王様と言うより王子みたいだ……噂によると変身魔法の使い手で毎日顔を変えているらしい。


 「報告が遅れてすまないね、こっちはちょいと笑っちまうくらいまずい状況になってるよ」


 {やはりか……此方としてもまずい状況だ}


 「ん?そっちも?どういうことだい?」


 {ナオミ殿が向かった後、準備が早く終わった騎士達が王宮ポータルを使いナルノ町へ転移した……そこまでだ」


 「何がだい?」


 {そこまでで通信が途絶え、ポータルが機能を止めた}


 「!?」


 「ギルドのポータルが!?」


 ユキが思わず声が出てしまった。


 {ふむ、そちらの方々は?}


 「紹介が遅れたね、あたしを救ってくれた冒険者パーティーの人達だ」


 {そうか、ナオミ殿を助けてもらって感謝する、名を聞こう}


 「ユキです!」


 「……ヒロユキ」


 {ふむ、もしも生き残ったら褒美をやらねばな……ギルドポータルが使えないとなるとこれ以上援軍も送れない}


 「絶望的な状況だね」


 {そこでだ、ナオミ殿}


 「あぁ、解ってる」


 {流石は代表騎士だ}


 アレン国王は改めてナオミに命令を出した。


 {あのモンスターは図鑑にも伝説にもない完全に新種……名を『ブルゼ』と決定した、至急、ギルドへ行きポータルを起動、全軍を率いてブルゼを討伐せよ!}


 「イエス、マイロード」


 映像が消えて魔皮紙に戻る。


 「聞いてたね」


 「はい!私達も__」


 「__あんた達にも協力してもらうよ」


 「え?あ、はい!……え?」


 「ん?どうしたんだい?手伝ってくれるって言いたかったんだろ?」


 「いえ、そうですが……」


 「ハッハッハ、頭でも下がると思ったかい?残念だったね、アンタらを少ししか見てないが解るよ」


 「何がですか?」


 「馬鹿がつくほどお人好しって事がだよ」


 「それは褒めてるんですか?」


 「もちろんさ、あたしゃ人を見る目は一級品さ、アンタらには人を引きつける物がある、だからアンタらについていく」


 「えへへ!はい!……え?」


 「なんだい、まだ何か不満があるのかい」


 「い、いえ!ここまで言われてて何ですけど“ついていく”方なんですか!?」


 「あたしは目が良いと言っただろ、今の王とのやり取りの最中に何か考えが思いついたんだろ?」


 「う……」


 「……ユキ?」


 「あるにはあるのですが……」


 それを聞いて代表騎士は「ほらな」って顔をした。


 「……試そう」


 「その……」


 「……ユキ」


 「分かりました、その作戦はですね__」



 __その時!



 「ぎゃぁぁああ!」




 「!?」


 「!」


 「……!」


 トイレの方から男の悲鳴が!


 「ヒロユキさん!」


 「……急ぐぞ!」


 全力で走り悲鳴の場所へ行くと__





 「だずげで!!!」






 小さいハエ……『ブルゼ』達が豚の獣人を襲っていた!





 


 

 

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