第79話 奴隷レンタルのレンタル!

 「ほう……これは……すごいさね」


 奥から出てきたチャイナドレスを着たアオイに対して高評価の町長。

 

 不思議とアオイが歩く毎に周りの空間がキラキラしているように錯覚するほど綺麗だった。


 「そうですよね!正直、ここまで露出も激しくて装飾も色もこれでもかと言うほど綺麗だと服だけに目が行きがちですがこの子だとそんな事がないんですよ!まさに服を着こなしてます!」


 「これはなんて言う服さね?」


 「《チャイナドレス》という服でして、なんとここ《ゴールド》でしか売ってない特注品ですよ」


 それもそのはず、この店で先程出来たのだから。


 「チャイナドレスとはまた柔らかいイメージの名前だけど、結構奇抜な服さね、外は寒いのにこんな露出が激しいと寒いんじゃないさね?」


 「そこがですよ!」


 よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに店長は説明をする。


 「まずこの生地に練り込まれてる塗料は火山地帯に住む【フレイムマルク】の血を特殊な方法で加工して使ってるので一定の温度低下を検知したら自動的に暖かくなるようになっております。さらに生地には【フリーピッツ】の素材を使うことで伸縮性が付き、この子の様に胸が大きくてもフィットするようになっております、さらにさらに......」


 「わかった、わかったさね、で、これの値段はどれくらいさね?」


 「オーダーメイド、さらに魔物の素材もかなり使いましたので4000万………と、言いたいですけど、ある条件をのんでいただければ無料であげますよ!」


 「ほーう、条件を聞くさね」


 無料と聞いて町長が一気に商談モードに入ったのか目が鋭くなる。


 「簡単な話です、今のこの子の魔写真を撮って服を宣伝させてください」


 「なるほどさね」


 その一言で町長は察したがアンナは分かってないみたいだ。


 「え!?先程アオイは公道で歩くと危ないって……」


 「そ、だからこれが良い考えよ?遅かれ早かれ、この美貌は隠し切れる者じゃないわ、フードなんてして隠してたみたいだけど敏感な人はこの子の肌や鼻、唇で美人だと認識して撮られてるわね」


 「確かに、フードで全て隠せるとは思っていませんが私が見てる限り誰も__」


 「誰も?」


 そう言いながら店長は写真を4枚両手にもって見せる。


 「っ!?」


 その4枚はどれも身に覚えのないはずのアンナが写っていた。


 「いつのまに!?」


 「この程度で気付かない人は説得力ないわよ」


 「く……」


 「だけど、逆に公に公表する事で少なくともアオイちゃんを含めた裁判、殺人なんてのは起きなくなるわ」


 「裁判?さ、殺人?」


 「あら?言ってなかったかしら?美を求めて殺人なんてここでは日常茶飯事よ」


 「で、でもアオイは特別な奴隷で……」


 「殺されるのはアナタよ」


 「え!?」


 「特別な事情を知るのは貴族たちでしょ?事実、私もさっき聞いて気付いたから、手が先に出る人は居るわよ?」


 「そ、そうですね……」


 「他に質問があれば全部言えるけど?」


 「いえ……ありません」


 「では町長」


 「うむ、だが無料じゃ足りないさね」


 「……ですよね」


 「売り上げの4割、貰うさね」


 「............」


 店長は考え、立っているアオイを見る......アオイは立っているだけだが店長にとってはどんな宝石よりもどんな美しい景色よりも輝いて見えている。


 そして......


 「分かりました!それで良いのなら!」


 ブールダ町長と店長は握手をし商談が成立した。


 「では、この子を借りますね」


 「こっちも次の仕事が待ってるさね、早くしてくれないと困るさね」


 「10分程度で終わります」


 そういってアオイを引っ張って写真室へ来た。


 「はーい、じゃぁ私の指示するポーズしてねー」


 「はい……」


 そこから10分間色んなポーズをアオイは要求され、それを撮られ続けるのだった。


 ………………………………



 ……………………



 …………


 店からアオイが出た瞬間、お祭り騒ぎの男や女までもが彼女を見て注目と的になった。


 そこから先は常に周りは人だらけ……あの日いなかった貴族達が「その奴隷はどうしたのか」や「一体どこの奴隷商で手に入れた」などの質問の嵐。


 そのせいで《ゴールド》から目的地まで10分くらいなのに30分かかってやっと三人は目的地に到着した。


 「まったく……大変な目にあったさね」


 フードはメイド服に脱着可能だが流石にこのチャイナドレスには無い。

 時間もなかったのでそのまま出てきたのが間違いだった。


 「......すいません」


 「その謝罪は皮肉にしか聞こえないさね」


 「……」


 「......しかし、町長、もしやと思いましたが」


 「なにさね?」


 「ここの人物は確か......」


 アンナはブールダから「誰に会うか」は教えられていなかった......しかし、屋敷を出たことないアンナでもここの表札に書いてある「人物」については噂で聞いていた。

 周りにあれだけ居た人達が今は居ないのもこの人物の存在が大きい……。


 「あんたは黙るさね、別にお前が対象って訳じゃないさね」


 「はい......」


 「......?」


 「何でもないわ、アオイ......気にしないで」


 屋敷の人物に会うためにアンナが町長の代わりにインターホンを押す。


 インターホンを押して5分程でスーツ姿の馬の顔をした獣人が現れた。

 

 「お待ちしておりました、マスターの所まで案内します」


 屋敷の中に案内され3人は入って行く。


 「(子供の奴隷がかなり多いわね)」


 アンナが屋敷の中を見渡すと、そこらかしこに小さな子供奴隷や子供の獣人奴隷達がボロい服を着て屋敷を掃除している。

 

 「(これだけの獣人……食事を用意するだけでも莫大な費用がかかるはず……)」


 この屋敷に居る小さな奴隷達の数は異常なほど多い。

 

 「(そう考えると、あの噂は本当かもしれないわね......)」


 馬の獣人に案内され豪華な模様の扉の前に到着した。


 「中でマスターがお待ちしております」


 「ご苦労さね」


 「はい、では私はこれで失礼します」


 「アンナ、開けるさね」


 「はい。」


 アンナが扉をあけるとそこには、でっぷりと太った芋虫みたいな男がケーキをくちゃくちゃ食べながら座っていた。


 「これはこれは町長、はるばる来てくださり光栄です、挨拶なら私からそちらに出向きましたのに」


 口のなかにあったケーキを呑み込んで机においてあったジュースを一気に飲み喉を潤す。

 

 「相変わらずさね......ここは上品な国とも言われてる国さね、そんな品のない食べ方やめるさね」


 「ガッハッハッハ、この国でこう言うことをするのが背徳感があるんでね」


 「ふん、本題に入るさね、この奴隷、お前少し借りて見ようと思わないさね?」


 町長がチャイナドレスを着たアオイを隣に立たせる。

 

 「ほーぅ?ほうほう」


 芋虫男は舐めるようにアオイを見る......そしていくつかアオイに質問を勝手にする。


 「お前、名前は?」


 「......アオイです」


 「出身は?」


 「............」


 「ふむ......」


 町長は少し焦った。


 「(まずいさね......アオイのこの素っ気ない対応は商談を不利にさせるさね)」


 「余計な事は今は言わないようにしてるさね、そいつは声も良い、これ以上こいつの声を聞きたいなら__」


 するとでっぷり男......《モグリ》は興味なさそうに喋りだす。


 「__借りるのはいいが金額によるな、いくらだ?」


 興味なさそうな癖に金額は聞いてくる。


 「そうさね……処女に手を出さない事と顔を傷つけない事、その条件で2ヶ月8億ってとこさね」


 金額を聞いてモグリは目を丸くする。

 

 「は、8!?それは高すぎじゃないか?奴隷一人にそれは__」


 「__無理ならいいさね」


 「ぐ......」


 モグリの言葉が詰まる。

 先程の興味なさそうなのは演技だったと言うわけだ、ここで町長は攻める。


 「お前は昔、自分の奴隷を使って奴隷商に殴り込ませ奴隷を盗もうとしたさね?そのせいでどの奴隷商にもブラックリストに入れられて、今じゃお前は奴隷を買えなくなっている。そんな奴にこーんな上物を貸してやろうって言うんだよ?」


 「分かった......あんたには他にも世話になってるしな、ただ8は高い......もう少し安くしてくれ」


 「話が早くて助かるよ、しかたない、昔のよしみだ、6まで減らしてやるよ」


 「もう一声!!頼む!」


 「じゃぁ、二週間で3だ、これ以上は無理さね」


 2週間で3億……期間は減ってるが明らかに最初の方がお得だ。

 

 だが8億も出せば他にお金が回らなくなる。


 「分かった......それでいい......」


 「毎度ありさね」





 こうして町長はゴールドの宣伝費と一瞬で3億を稼ぎ、アオイで出費した分を取り戻した。









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