第25話 ベルドリの卵!


 《地下3階》


 階段を降りた先にはまっすぐ道があり、その両側いくつもの部屋の扉がある。


 道の先には階段が見えるが、あれはこの部屋で訓練終わったら行く所、つまり地下4階の入り口なのだろう。

 

 「ここに居ろ」


 看守に案内された部屋は学校の体育館くらい広い部屋で床一面に藁が敷かれていた。


 「おぉ……」

 

 堅い床で生活していた俺にとっては藁は高級じゅうたんと変わらないくらいフワフワしている様に感じる。


 そうだ!天才的な事を思いついた!藁を集めればベッドになるじゃん!


 ちょっとワクワクしながら考えてたらアナウンスが鳴り響いた。


 {次の訓練は取ってきた卵をそこの孵化魔方陣に入れて、これから一週間、魔物を育てるのが次の訓練内容です}


 へぇ……


 「そんなことでいいんだ、楽そうだね」


 自慢じゃないが、俺は小学生の時は飼育委員長だ!

 

 「おで、育てるの好きだど」


 「俺はあまり得意ではないなぁ」


 そんな事を話してたらトカゲさんと猫耳さんもこの部屋に入ってきた。


 「そっちも終わったみたいだね」


 「苦労したカロ」


 「しばらく水は嫌です……」


 二人ともびしょ濡れで本当に疲れてる。


 まぁ、水泳とか終わったらどっと疲れるもんな、その後の国語とか眠たくて眠たくて仕方なかったし、そんな感じかな?


 「でも今回はこの卵を育てるんだって、楽だね!」


 「そうなのカロ?」


 「5番、33番、35番!こっちに来い!」


 「あ、ごめん、呼ばれたから行くね?」


 部屋の入り口付近に居る看守の所へ行くと、壁に正方形のブロックを一個抜いたような空間の中に魔方陣が書かれていた。

 

 「この中に卵を入れろ」


 3人が卵を入れたのを確認すると看守は魔法陣に魔力を流して起動した。


 「よし、32番、34番!こっちだ!」


 トカゲさんと猫耳さんは別の壁の方に案内されている、どうやら魔物の種類によって違うみたいだ。


 看守は仕事を終えたのか部屋を出ていった。


 

 ………………正直、ワクワクしてる自分がいる。


 だって魔物を育てるんだよ!そんなの異世界に来てからじゃないと出来ないじゃん!




 ____そして




 「あっ!」



 卵が動き出して小さなクチバシが出てきた。


 「産まれる!」


 そして大きな卵からは想像もできないほど片手サイズの小さなヒヨコが産まれた!


 「ピヨッ!」


 「よーしよしよし」


 自分の声とは思えない猫なで声をだしてそっと手を近づけていくと


 「ピッ!」


 痛い、噛まれた……。


 隣ではゴリさんもライオンさんもベルドリが産まれてはしゃいでる。


 「とりあえずコイツを育てればいいのかな、というか、魔物って孵化してからすぐに目も開いてるし立ってるし毛もあるんだ……」


 ヒヨコを見ると産まれたばかりとは思えない状態だった、例えるならアニメのポ○モンの卵から孵ったばかりの状態。


 「それはその魔法陣の影響だと思います」


 「あ、ネコミ……34番さん」


 いつの間にか後ろに来ていた猫耳さんから回答が来る。


 「34番さんはこういうのに詳しいの?」


 「あまり詳しくないですけど……前にお父さんが同じ魔方陣を使ってるのを小さい頃に見てました」


 「農業してたの?」


 「…………その数日後にここに売られましたが……」


 「そ、そっか」


 なんか悪いこと聞いたな……離婚してる人にお母さんの話してるみたいな感覚。


 「気にしないでください、あ、私は失礼しますね」


 そう言って猫耳さんは大きな桶に水を入れ出した。


 なるほど、猫耳さんたちの卵は魚っぽい?から産まれた後に入れるのか……




 「あ!そうだ名前つけないと!名前」


 「ぴよっ!」


 名前はちゃんと付けとかないとねえーっと……じゃぁ__





 「お前の名前は今日から“ヒロスケ”だ!」






 親しみと憎しみを込めてその名前にした。





 勇者なら俺を助けにこい!


 お兄ちゃん、異世界生活序盤にこけてホームレスみたいな格好で奴隷になる訓練してるぞ☆……くそ、言ってて惨めになった。



 「えーっと、まずやる事はなんだろ?」


 とりあえず何もわからないので隣ではしゃいでるライオンさんに声をかけた。


 「うーむ、どちらにせよ、こいつらの腹を満たしてやらんとな」


 なるほど、確か卵から出て来るのってかなり体力使うって言うしな?


 「確かに……でもエサなんてどこにあるんだろ?」


 「俺に任せろ、臭いがする」


 ライオンさんは目を閉じてクンクンと鼻を鳴らし歩いていくので俺とゴリさんはついていく。


 「この扉の中から魔物の餌の様な匂いがするぞ?」


 先程の部屋を出て少し離れた所の重そうな扉の前に来た。

 流石ライオンさん!犬みたいだぜ!……あれ?ライオンって猫か?


 「じゃぁ、開けるよ」


 俺は鉄製の扉を力を入れて開けると


 「おぉ!ほんとだ!」


 中は餌の倉庫だった。


 色んな紙袋にそれぞれの魔物の名前とロットNo、さらには内容物まできちんと書いてある。


 「これが一番臭い」


 ライオンさんが1つの紙袋を鼻をつまんで臭そうにしながら持ってきた……えーっと何何?


 「【ブロスコックローチ】って書いてあるけど」


 「虫だな」


 「ですよね」


 ま、まぁ、魔物の餌だしあるよね。


 「他の餌と何が違うんだろ?」


 「おで、きいだごどある」


 「?」


 「たじか、普通のえざより栄養がずごい」


 「なるほど、まぁ見た目相応の能力があるんだね」


 えーっと……他に何か……


 ____!!!!



 「うわぁぁぁぁあ!!!」


 「どうした35番!」


 「どうしたど!」


 俺は“あるもの”を見つけて腰を抜かしてぷるぷる指をさす。


 「あ、あれ……」


 「ん?な!?」

 

 「あれは!」


 その先にはボロボロの毛布があった。


 「ぅやったぁぁぁあ!!!!」


 



 〜完〜





 いや、終わりじゃないけど!


 「これであったかくして寝れるね!」


 「あぁ!」

 

 「ゔむ」


 在院満場一致の超代物。


 毛布を手に取ると指の先からくる幸福感が脳をしげきする……早くこれで寝たい!


 「35番さん!」


 毛布を抱いてると猫耳さんが焦りながらこっちにきた。


 「あ、34番さん」


 「何してるんですか!」


 「え?あ、ほら毛布が__」


 「__みんなの赤ちゃんが死にそうですよ!!」








 「え!?」



















 第2の訓練開始。









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