第14話 馬車でのハプニング!?


 「逃げてください!こ、此方はもうだめ____」


 騎士は最後までアオイに言葉をかけれなかった……なぜなら言葉の途中で首が落ちたからだ。


 「__っ!!!!!」


 ゴロッと騎士の頭が馬車の中に転がり、先程までドアに手をかけていた頭の無くなった身体は力なく地面に倒れドアに挟まれる。


 「は、はぁ……かっ……ひゅ」


 生首はちょうどアオイを見る様に床に落ちている。

 目が合ったアオイは過呼吸になり、身体が意思とは関係なく震えが止まらなくなる。

 

 「ふ、ふ……あ、ぅ」


 目を閉じて耳を塞ぎ呼吸を治すことだけに集中する。


 「は……ふ……」


 何とか呼吸は治った。

 アオイは生首と首のない身体を見ないように下を見ずになんとか壁を使って外に這い出たが……


 「な、なんだ……これ」


 しかし、外に出ても暗い森の中で地獄絵図は変わらなかった。


 豪華な装飾のされた馬車には血の色が塗られ、先程の騎士のように残酷な死体が散らばっていた。


 「うっ__」


 我慢出来ずにアオイはその場で嘔吐する。


 「あっらー?馬車の中には新しい女王様が居るって話だったのにねぇ?」


 アオイはその声の方を見上げる。


 そこにはセミロングで目がつり上がって気が強そうに見える女性が口元をニヤケさせ、血にまみれたナイフを手で遊ばせながらアオイを見下ろしていた。


 「うーん、おかしいわねぇ」


 「あねさんでもこいつぁ高く売れそうですぜ?」


 そしてアオイを取り囲むように周りから10人くらい男が出てくる。


 「そうねぇ」


 リーダー格の女は見上げるアオイの顔をまるで値打ちを決める様に舐める様に見た後__


 「ま、女王様を拉致して金儲けよりこっちの方がリスクはないしねぇ」


 と言ってナイフを仕舞った。


 「……」


 殺されなくて少しホッとしてるアオイだが__


 「へへ、こいつぁいい、少し味見を」


 別の意味で恐怖する事になった。


 「ひ、ひぃ」


 「馬鹿だねアンタ、そんなことしてみなよ、商人に味見したのが見抜かれて値段が安くなるだろ?そんな事もわからないのかねぇ」


 淡々とした言葉だが、先程のニヤけていた顔は消えて冷たい目ででしゃばった男を威圧する。


 「そ、そうでやした」


 「ほら、分かったなら早くこいつを“アレ”に入れな、変なとこ触るんじゃないよ?こいつを売れば間違いなく今後の生活が保証されるくらいの上物だ、変な所で値段を下げたくないからねぇ」


 「わかりやした!」

 

 「い、嫌だ!来るな!」


 「!!!」


 アオイは立ち上がり望みを乗せて手のひらを近づいてくる男達に向けるが__何も起こらなかった。


 「……」


 「……」


 さながら○ラシックワールドのラプトル達を止める様な格好で静止してるアオイ。


 「びっくりさせやがって!」


 「ひぃ!ごめんなさい!さようなら!」


 アオイは一目散に後ろへ全力疾走したが回り込まれる。


 「はや!」


 「お前バカか?逃げられる訳ないだろ、大人しく俺達に捕まれ!」


 「嫌だ!……嫌だ!」


 「あ、こら!暴れんな!」


 最後の最後にアオイは掴まれた瞬間暴れたが大の大人の男達には無力に捕まり魔法で手と足を拘束され目隠しをさせられた。


 「誰か!誰か助けて!」


 「威勢がいい子だねぇ、ほら、とっととコイツの口を塞ぎな!魔物達が寄ってきたら面倒だ!」


 「へい!」


 「助けモゴゴゴゴ」


 アオイはさらに口の中に布を入れられ喋らなくさせられる。


 「さ、運ぶぞ」


 「んー!んー!」


 拘束されても尚、芋虫の様に暴れるアオイは公衆電話ボックスを横にした様なガラスケースに入れられる。


 「んん!んん!」


 ドン、ドンとガラスを蹴って音を立てるがまったく意味をなさない。

 

 そのまま抵抗虚しく屈強な男達にケースごと運ばれ、次第にアオイは静かになっていった。




 「ようやく落ち着いたねぇ」


 「……」


 ガラスケースの中でリーダー格の女の声が聞こえてくる。


 「あー、そうそう、トイレしたくなったら思いっきりそこでするといいねぇ、その時はパンツはこいつらに履き替えさせるからきっと喜ぶねぇ」


 「んんん!?」


 アオイが絶対に漏らさないと決意した瞬間だった。


 


 ____歩く事10分




 ガラスケースは開けられアオイの唾液をたっぷり含んだ口の布が取られる。


 「最後に言い残したいことはあるかねぇ?」


 「さ、最後?」


 「そ、アンタの普通の生活の最後だよ、アンタは今から魔法冷凍睡眠カプセルで強制的に眠らされる」


 「ま、魔法冷凍睡眠カプセル?」


 「そのカプセルは軽くて運ぶのも楽だし、魔力を流すと睡眠魔法が発動して眠り……次に起きるのはまたこのカプセルに魔力が流される時……つまり、ご主人様が決まった時だねぇ」


 「それって……まさか!」


 「そう言う事ねぇ、じゃ、“立派な奴隷になったらまた会いましょ”」


 アオイはカプセルに入れられ閉じ込められる。


 「だ、出して!ここから出して!誰か!」


 カプセルに魔力が流されアオイは急激な眠気に襲われた。

 

 「誰……か……ヒロ……ユ……」







 最後に弟の名前を言って眠りについた____



 ______



 ____



 __













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