第12話 サクラ女王!


 「まさか、俺の目の前で殺人事件が起きてたとはなぁ」


 サクラ王女……いや、女王か……彼女は俺に気絶した後の事を話すと用事があるからと部屋から出て行った。


 ザッパーンと洗面器でお湯を頭から被る。


 「はぁ……シャワーで洗いたい」


 俺はお風呂で身体や髪を洗うときは根っからのシャワー派だ……ここにシャワーが無いって訳じゃないんだけど……


 「これがまたうんともすんとも言わん!くそー!」


 見慣れたシャワーの先はあっても蛇口がない!!


 何とか起動させようとシャワーの頭にある魔法陣を指でなぞったり、お風呂場で「シャワーでろおぉ!」とか1人で言ったり、終いにはムカついてシャワーの先端を折ってやろうかと思ったがそれは流石にやめた……

 

 と、言う事でシャワーを諦め、予め浴槽に溜めてくれていたお湯で洗っているわけだ。


 ちなみにシャンプーとかボディソープとかは見慣れたプッシュ式のいつもの入れ物に入ってるので助かった。


 「ま、助かったのはいいけど……この髪の長さと量……洗うのめんどくせええぇ」


 適当にワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャーー終わらんわ!ボケナス!


 「世の中の女の人がなんで髪を伸ばしてる人少ないか理解した……座るとき引いちゃったりするしドアにひっかかりそうになるし」


 この世界の散髪屋ってどこ?街に着いたらまず切ってやる!


 街……


 「俺が眠ってる間にヒロユキは先に街に行って異世界冒険を始めたんだよな……でも俺達の目的である『魔王』は居ない」

 

 それを最初から知っていたのなら、何故俺達が召喚されたのか……


 「考えられるのは俺達を戦争に利用しようとしていた、か」


 サクラ女王は俺達は俺たちで生きてほしいと言っていたが正直そんなに簡単に勇者と言う戦力は手放せるものだろうか?


 うーん……どうしても信じれないのは女性恐怖症だからかな?


 「まさかあの人がラスボスだったりして……ハハッ」


 まぁでも、何だかんだ間違ってないと思うんだよね?

 だってさ父親殺してんだよ?なのにあんなにケロッとしてるんだよ?おかしくない?殺人鬼だよ?


 もしかして……


 「この世界では殺人は当たり前……とか?」


 よくよく考えたら異世界の漫画やアニメってモブがまじですぐ死ぬよな……それに対して反応みんな薄い気がする。


 「ま、まぁそんな事を気にしてたら女性だけじゃなく周りの人間全部恐くなっちゃうから頭の中の価値観を変えよう…………うん、この世界で殺人は普通」


 殺人は当たり前。よし!インプット完了!


 完了ってとこで頭の上から洗面器で水を被る。


 「ぷるるるるる……ふぅ……さてっと……」

 

 後は身体。


 スポンジとか無いから自分の手で直塗りボディソープになる……はぁ、憂鬱。


 「とりあえずこの無駄に洗うとこの多い胸からだな」


 ヌチャっとボディソープを手のひらに出して胸に白濁の液体を塗って行く……


 「この感覚……オエェ」


 洗っているとフヨフヨとなりパイ圧で指を押し戻してきて、さらに胸から俺の脳に伝わる変な感覚は俺が女になった事を直で感じさせる。


 「あー……まじで憂鬱、自分の身体触りたくねぇ……」


 慣れない手つきでなんとか身体を洗い終え浴槽に入った。


 「多少のイレギュラーがあったけど、異世界転生生活かぁ」


 どうしようかな。

 今の所スーパーマンみたいに身体が強くなった感覚がないから異世界でのチート能力は授かってないパターンと考えた方がいいだろう。


 この時点で【冒険者になり「すいませんコレ狩ってきたんですけど」実はめっちゃすごいモンスターでした!】みたいなタイトル系の異世界生活は無しだな……え?タイトル長い?今の時代そんなもんでしょ。


 てなると、他のパターンとしては


 “奴隷を買ってその子と過ごすライフ”

 “魔物と仲良くなって村開拓ライフ”

 “貴族の人を見つけて働かせて貰うライフ”

 “最初の町でバイト生活ライフ”


 うーん、これ以外にも色々あるから迷うなぁ。



 「あ!そうだ!あれにしよ!」



 うんうん、“アレ”なら魔力の使い方解らなくても快適ライフが出来そうだ!



 「う、ちょっと頭がクラッと来たな、のぼせる前に出よう」


 

 掛かっていたバスタオルを取って身体となが〜〜〜い金髪の髪を拭きながら裸でお風呂を出てドアを開ける。


 「はぁ、しんどいし髪はもういいや」


 洗面所のドアを開けベッドの部屋へ行くと____


 『髪は乾かした方がいいわよ、アオイちゃん♪』


 「っ!?」


 ベッドにはサクラ女王が座っていた……だけどなんだ?


 「サクラ……女王?」


 明らかに雰囲気が違った。


 『あれ?やっぱり解っちゃった???♪フフッ……半分はずれで半分正解、この子の意識は今、私が主導権を握ってるの』


 パチンと女王が指を鳴らすと部屋の明かりが消えてが暗くなる。


 「…………じゃぁ、あなたは誰?」


 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!絶対この状況ヤバいって!


 とりあえずヤバい状況に焦ってるのを顔に出さない様にしないと!


 こう言うのは臆した方がもっとヤバいことになる!


 『キャハハッ♪私?私は……そうね……女神よ』


 「!?」


 『この子から少し聞いたわよね?女神の事は』


 こいつが!この世界の『女神』!

 でもなんでここに?なんで女王に?


 『可愛いわね♪』


 女神はベッドから立ち上がり舐める様に俺の身体を見ながら近づいて来る!


 逃げろ!


 そう思った時にはもう服なんてどうでも良くなり全裸上等で部屋を出ようとするが____


 「あ、開かない」


 『キャハハッ♪無駄よ?魔力の使い方も解らないんだから鍵を閉めれば出られなくなるねぇ♪』


 この状況を予測していていたのか、女神は俺を弄ぶ様に言ってくる。


 「くそっ!おらぁ!」


 思いっきりドアを蹴ったがビクともしない……それどころか裸足なので足が痛い。


 『あらあら……そんなに可愛いのにお股をすぐ開くんじゃありませーん♪』


 「ひっ!」


 女神が人差し指をクルッと回すと同時に俺の手足が見えない何かに掴まれ空中を浮いた。


 『ほーら、捕まえた』


 「は、離せ!」


 『ベッドでその身体、よ〜〜く見せてね♪』


 「う、ぉ!?」


 そのままベッドに運ばれ仰向けにされ両手両足を拘束された。


 「く、来るな!寄るな!」


 言葉の抵抗も虚しく女神は俺の上に馬乗りしてきた。


 『にしても、本当によ〜〜く出来てるわね私の身体!興奮しちゃう♪』








 そう言って俺の首を舐めた。









 「っっっ!!!!!ぎ__」


 『おっと♪お口チャック♪』


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぃぁぁぁぁぃぁぁあああああおええええええぇえぇぇえ!!!!


 『キャハハッ♪ちょっと舐めただけじゃん♪』

 

 「んんんん!んんんん!」


 女が俺に触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな!


 『だめ♪触れちゃう♪』


 「んんんんん!?!?!?!」


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!!!!!


 『思った通り、アナタの病♪かなーり重症ね♪……ま、これがあったからそ私がアナタをいじれたんだけどね〜』

 

 ど、どう言う事だ?いじれた?それにさっきから喋ってないのにまるで心を__


 『そ♪私は神よ?心くらい読めるわよ♪だから隠しても無駄、あなたが怯えてたのもずーーっと聞こえてるから♪』


 な!?


 『神はアナタを異世界に転生させるとき一度魂と身体を分離させ、この世界に順応、さらに神の加護を付けるために身体をつくりかえるのよ』


 ……


 『そして、私はその時に少し邪魔したわけ♪生贄に私の因子をいれて身体を作る時にちょっかい出せる様にした……だけど神も気付いてたのね?あの世界に行っても何もなかったわ……だけど』


 ……?


 『アナタの心の奥底、ダダ漏れの負の感情が私を導いてくれた♪』


 ま、まさか


 『そう、アナタの女が近づくだけで出てくる感情よ♪』


 俺の女を拒否する心がまさかの1番やばい女を引き寄せたぁ!?


 『ひっどーーい♪ヤバいって言うのはお互い様なのに〜♪』


 お前ほど俺はヤバくないぞ!


 『そ〜う?だってさ〜女が近付くだけで出てくるその負の感情の数々って“素”がないと考えつかないよね?』


 も、と?


 『そう!アナタには才能があるの!女性恐怖症と言う理由があるだけでアナタの本当の心は真っっっ黒!じゃないとここまでの負の感情は普通の人間では産まれないもの!光の届かないくらいの闇!』


 そ、そんな厨二病乙みたいな事!


 『いいえ?アナタは根っからの悪よ、それを自分に蓋をして隠してるだけ』


 そんな事ない!……たぶん。


 『根本的な悪って言うのわね?自覚がないものなのよ』


 お、女の言う事なんて信じれるか!ましてや絶対悪って言われてる女神の事なんか!


 『あーもう、そろそろウザイからとっとと始めちゃうわね』


 な、何を?


 『ちょ〜〜と……どころかめちゃくちゃ苦しいわよ』


 女神は指先に魔法陣を展開させてそれを俺のおでこにつけた瞬間____


 「んんんんんん!!!!!!?????」


 か、身体が……溶けるように熱い!!!!


 「んんん!!!!んんんんん!!!!!!!」


 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!


 まるで俺の身体の中身が全て溶けていくかの様だ……


 『あは!!良いわね、苦しんでる苦しんでる、ゾクゾクしちゃう♪』


 女神はケタケタ笑う。


 この笑いかたを俺はよく知っている……イジメてるときの女子特有の優越感に浸ってる笑い方だ!


 こいつ!!!殺してやる!!


 『ほい完了♪』


 俺に何をした!


 『あなたが感じる“女性への不快感”を無くしてあげたわ』


 …………はい?


 『その証拠に……ほら♪』


 女神は俺の胸を指先でなぞると__


 「んぁ…………っ!!」


 先程首を舐められた時の不快感は無く。

 身体がゾクゾクとして少し甘い声を出してしまい恥ずかしくなる。


 『エッチな声、でちゃったね♪』


 う、うるさい……


 『じゃ、私もそろそろ時間みたいだから行くね♪』


 どこに行くんだ!それにこの状態で放置するな!!!






 『じゃぁね?お風呂あがりって眠いよね?邪魔してごめんね?じゃ、お・や・す・み♪』



 





 また、か……。







 俺はまたもや全身麻酔をかけられた様に睡魔が襲ってきたのを抵抗できずそのまま意識を失った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る