第7話 かぶ
「具体的にライバルってどんなことをするんですか?」
「そうね。雨くん、株をやってみない?」
「株?」
「ええ、マネーゲームと呼ばれる株式市場へ挑戦するのよ」
日和からの進言に雨は戸惑う。
2000万の借金を返済するために金融リテラシーを身に着け、ブログをやり始めたばかりだ。応募することが大切と教えられた昨日の今日。新しいことに挑戦するのはやぶさかではない、むしろかなり積極的に思っている。しかし、挑戦するテーマが株となれば躊躇してしまう。
株は恐ろしいイメージがある。
「パチンコと株をやる人は借金をする人の典型的なイメージです」
現に20歳の自分もパチンコ、スロット、競馬、株、fXで負けた。
株は勝てない。アマチュアとプロの差が如実に出る競技。
「そんなことはないの。パチンコは投機、ギャンブルよ。でも株は違う。株は投資、資産運用よ」
「投機と投資ってどう違うんですか?」
「投機は一か百か。ゼロになるリスクが十分にある。でも投資は違う。毎年毎年コツコツとお金を増やすことができるの」
「はあ~」
雨は心の中で何度も株を否定する。株はしない。彼の心は結論を告げている。
日和に背中を見せ、サヨナラをする。
「未来人の人がいて心強いです。でもこの話はなしにしましょう。僕は株をやりません」
「どうしても、株をやらない?」
「はい、どうしても株をやりません」
株で大失敗する典型的なパターンが、株に詳しくない素人がカモにされる、ということ。
銀行や証券マンのアドバイスをそのまま受け取り、手数料の高い金融商品を買ってしまうのが最初の負けパターン。何も知らず、ぼったくり商品を買い、むしり取られてしまう。
雨はブログに専念したかった。月5万、10万と稼ぎ、少しでも未来のためにお金を増やす。
中に入ろうと屋上のドアを開けると、背中から日和の声が飛んでくる。
「雨くんは株をやらないと絶対に後悔する。私と一緒にマネーゲームをしない?」
「結構です。お互い、頑張りましょう」
「そう、もういいわ。未来人をなめないでね」
頼もしい仲間ができたと思ったのに早くも決裂してしまった。
放課後、久守機構に日和について情報を聞こうとした瞬間、スマホに連絡が入る。
新しく交換した日和からのメッセージだった。
『未来の雨くんを捕まえました。命が惜しければ私とマネーゲームしなさい』
脅迫文に雨はおののいた。
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