16

ふいに琴葉が顔を上げた瞬間、雄大と目が合う。


「きゃあ!」


雄大がそこにいることに驚いたのか、琴葉は悲鳴を上げて反射的に一歩引いたが、その拍子に火にかけていた鍋に手が当たってしまった。


「あつっ!」


「ごめん、大丈夫か?」


雄大は慌ててかけより、琴葉の手を掴んですぐさま水道水に当てる。


「あの、すみません。大丈夫です。」


琴葉は手を引こうとしたが、それを雄大は許さず、さらに強く手を掴む。


「ダメだ、痕になっては大変だからきちんと冷やさないと。」


ほんの少し鍋に手が当たっただけで琴葉にとっては全然大したことではないのに、真剣な顔で言われて琴葉はされるがままだ。


冷たい水で手は冷やされているはずなのに、手首を掴まれていることや雄大との距離感が近すぎて、動揺して勝手に頬に熱を帯びてしまう。


チラリと彼を見上げるとそこには端正な顔があって、かっこいいなとか背が高いんだなとか、そんなことがふと頭を過って、更に動揺でドキドキと心臓が早くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る