14

16時からの打合せは、クライアントを交えて大型商業施設及び区画整理の計画の確認とディスカッションだ。

議論は白熱し、予定時間を大幅に延長して気づけば二時間を超えていた。


クライアントを送り出してデスクに戻り先程調整した事項を読み直していると、デスクに無造作に置いていたスマホがブンブンと震えた。

雄大は手に取り番号を確認するが、全く覚えのない番号だ。

訝しげながらも電話に出てみると、可愛らしい女性の声が聞こえた。


「早瀬様のお電話でよろしいでしょうか?」


「…はい。」


「私、パン屋minamiの南部と申します。」


「あっ!」


すかさずモニターに表示されている時計を見ると、パンを受け取りに行く予約の19時をとうに超えていた。


「すみません、忘れていました。」


頭を下げる勢いで正直に言うと、電話の向こうでクスリと笑う気配がした。


「大丈夫ですよ。どうされますか?取りに来られますか?キャンセルなさいますか?」


時間を過ぎてしまったことすら申し訳ないのに、更にキャンセルだなんてさすがにできない。


「すぐ行きます。」


電話をしながら雄大の右手はマウスを素早く動かして、ファイルの保存をしてからパソコンをシャットダウンする。


「かしこまりました。お待ちしております。」


雄大が椅子から立ち上がる頃には通話は終了し、脇目もふらず小さなパン屋minamiへダッシュしていた。

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