09

そんな雄大に、琴葉は「あの」と尋ねる。


「もしよろしければお取り置きとか、別の日にご予約とかもできますよ。」


せっかくシュガートップを買い求めに来てくれたのに、お目当てのものがないなんて残念に違いないだろう。


「少量でも?」


「はい、もちろんです!パンおひとつから承ります。」


実際、常連客である近所の年配の女性は毎日のようにコッペパンを2つ取り置きで買いに来る。

きめ細やかなサービスは、個人店ならではだ。


「お店は何時まで?」


「19時まで営業しております。」


雄大は営業時間を確認すると、自分の今日の予定と擦り合わせる。

打ち合わせがひとつ入っているだけなので、19時までにはもう一度ここに来られるだろう。


「じゃあシュガー…なんだっけ?」


「ふふ、シュガートップです。」


「2つ取り置きしてもらえますか。時間はちょっと曖昧だけど、19時までには来ます。」


「はい、かしこまりました。」


琴葉はメモ用紙とペンを取り出し、商品に付けられているPOPと同じく可愛らしい字で“シュガートップ2つ”と書いた。


「それでは、お客様のお名前とお電話番号をお伺いしてもよろしいですか。」


雄大は琴葉の可愛らしい字の下に、それとは正反対な無骨な字で名前と電話番号を書いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る