第30話 真夏

ハンノキの緑が空間を満たしている

私が会いたいのはあの人なのに

ハンノキは自分と会えただけで満足しろと言う

夕方になるともう寒くなってくるのに

夜は霧で星が見えないのに


真夏といえどももう八月

日に日に陽は短くなっていくのに

昼間のこの暑さは

昼間のこの明るさは

感覚を麻痺させる


あなたはやがて遠い街へ行ってしまうのに

寒くなって暖かくなったら行ってしまうのに

寒くなる気配は

もうこの地に忍び寄っているというのに

太陽はその気配を巧妙に隠している


これは詐欺だ

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