第4話 りんご

ひあたりに転がっているりんごに憧れていた

りんごの持つ幸福も喪失も知っているのは

私だけだと思っていた

本当に りんごに憧れていた

りんごが欲しくて仕方がなかった


でも あなたに会って

いつのまにかりんごのことは

どうでもよくなっていた


あれほど焦がれていたりんごなのに

むしろ あなたには

りんごのことなど知らないまま

私がりんごに憧れていたいたことも知らないまま

ひあたりで ただ笑っていて欲しい

そう思った

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