第13話
どうして水族館に来てる事を知ってるんだろう。
もしかして今、ここに?
葵は恐る恐るその場をぐるっと見回してみたが、それらしき人物は見あたらなかった。
そしてこの時、葵の中の恐怖が怒りに変わり始め、自分達はこんな事ぐらいで揺らぐ様な関係では無い事を知らしめたい感情が徐々に沸き上がってきた。
「あいつから連絡があったのか?」
葵は、仁のその問いには答えずスマホの充電をOFFにした。
「今日はせっかくのデートなんだから、気にしないで楽しもう」
どこか吹っ切れた葵の様子に仁は思わず笑顔になって、
「そうそう。それでこそ葵だ。じゃ、そろそろ出ようか」
「うん。ねぇ、予定変更しても良い?」
直哉からは見られない場所へ行きたかった。
「いいよ。どこへ行く?」
「カラオケ!」
「いいね。行こう」
歩き出そうとした時、ふいに仁が立ち止まった。
「そうだ。忘れてた。これ」
そう言ってポケットから出した物を葵に差し出した。
ナイフだった。
「護身用のナイフ。俺が側にいる時は葵の事守ってやれるけど、いつも一緒と言う訳にはいかないから。いざと言う時の為に持ってて」
「ありがとう」
仁の優しさが嬉しかった。
この日はカラオケを3時間ほど楽しんで、家へ帰った。
家に着いて仁にメールをしようとスマホの電源を入れると、直哉から何十件もメッセージが届いていて、その内容はと言うと思い付いた言葉を次々送って来ている感じだった。
仁と葵の会話の内容だったり、どれだけ自分が葵の事を思っているかを何度も言っているかと思えば、そのうちこっちが無視している事に怒り始め、最後の方はただただ罵詈雑言。
そして着信履歴も20件ほど。。
今また新たに着信音が鳴り出したが、葵は無視する事にした。
ずっと無視してたら、やがては諦めるかもしれない。葵は淡い期待をいだいていた。
しばらくして、茜が帰ってきたが、かなり慌ただしく駆け込んで来たので、何事かと見ていたら、
「お姉ちゃん。あのぬいぐるみある?あいつが送って来たやつ」
「あるけど、何?いきなり」
「あのぬいぐるみに、盗聴器が付けられてるかもしれないの」
「盗聴器?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます