スタイリッシュ農業 黒銘菓短編集11弾

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

南瓜との戦い

「ブファ!」

蔓を手足の様にして蠢く、人間の身長くらいある南瓜が暴れていた。

南瓜が大口開けて種を撒き散らす。

周囲の地面が弾け、土埃が舞う。

「気を付けろ、こいつは種攻撃が通常より多い!」

鎌を加工した爪の様なノーグ、通称鎌爪を装備した鎌爪さんが叫ぶ。

種攻撃を避けて鎌爪さんは走る。

「セイ!」

鎌が一閃。しかし蔓が盾になって防ぐ。

それを予期してたかの様に鎌爪さんが退く。

「撃て!」

バババババババババ

南瓜から離れたところに居た唐箕ガンズが空気の弾丸を撃ち込む。

ノーグに珍しい中遠距離用。農具の唐箕の形に似ている。

蔓の壁が不可視の弾丸で削られる。


「そいや!止め!頭カチ割れ!」

その言葉は俺に掛けられている。

皆が戦う中、ひっそりと南瓜の後ろに気配を殺して隠れていた。

四刃式Beat対狂暴農作物You用収穫機Quattro 通称:備中鍬』

鍬の形をした一撃必殺のノーグ。

ずしりと来る重みを両手に感じつつ南瓜の背後に走り込む。

狙うは頭。

外しはしない。


あと一歩で届く!


しかし

「なっ」

走り込んだ鎌爪さんと俺が転ぶ。

違う!

南瓜が足元を蔦で覆っていた。


トラップ!やられた!


「ボファアア!」

怒り狂った南瓜が隙を見せた鎌爪さんを捕らえる。

「この…」





鎌爪さんが居なくなれば飛び道具とのろまだけ。それではコイツを狩れない。

地面が迫る中、俺は一瞬思考を巡らせ…



ガン!



鍬を伸ばして南瓜の後頭部目掛けて振り下ろした。


 ガツン


刃がめり込む。しかし、致命傷には至らない。


「クソォ!」

鎌爪さんが悔しがる。が、

「未だだ!」


 転倒の勢いを握った鍬の柄に伝え、両腕の力で下半身を持ち上げて、足を天高くへ放り上げる。


 棒高跳びの真似……と言ったところだ。


 放り出された体は鍬の先、南瓜の頭頂部に着地する。


 「悪いな。お前の命、頂きます!」


 蔓を伸ばそうとする南瓜。しかしもう遅い。


 抜き取った鍬で南瓜の脳天を






 叩き割った!

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