玉道な異世界おっさんスローライフ 黒銘菓短編集4弾

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

スローアーのライフ

 カール=スティーブ(55) 住所不定。職業:スローアー。

 俺だ。




 家が無いのは性に合わない。

 同じ場所に腰を据えるのが苦手だ。

 野宿や心優しい人から偶に屋根を借りて、自由気ままに生きている。

 偶に狩りをすれば報奨金が貰える。

 喰うには困らない。


 朝日と鳥のさえずりが俺を起こし、フクロウが寝ろと急かす。

 偶に魔物が寝ている途中に起こしてきたりもするが、臨時報酬兼食料が飛び込んでくるんだ。笠地蔵だと思えばいいものだぞ?



 良い生き方だぞ。スローアーのライフは。


 スローライフは良いぞ。




 今、俺が居るのはチージアという小さな村。

小さな村で、お世辞にも栄えてるとは言わない。が、ここのチーズは最高だ。

 朝食に硬いパンの上に溶けたチーズを載せたものを貰ったが、アレはどんな豪華な王族の食事だって霞む。

 完成された一つの真理だ。





 ここにならもう少し居てもいい。



 そんなある日、全身の細胞がチーズパンに拍手喝采を贈っている時に、事件は起きた。

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