第一話 ミレイ4歳
早朝窓から入ってくる陽射しで目を覚ました。
「今日もいい天気なの」
部屋の窓から空を見てそんなことを呟いている少女。ミレイ=サルシャ、四歳。銀色の髪に青い瞳を持つ少女。
部屋の窓から庭を見てみると母アレン=サルシャの姿があった。アレンは毎朝庭で育てている野菜の世話をしている。
こっそりと近づいて驚かそうかなと考えたミレイ。
すぐに服を着替えて部屋を出る。
家を出て野菜の世話をしている母の後ろにこっそり近づく。
「ママ、おはよう!」
後ろから声をかける。
「ミレイおはよう」
あまり驚いていないアレン。
「ママ、ビックリした?」
「ビックリしたわよ。そんな悪い子にはこうよ」
わき腹をくすぐってくる。
「ママ……ごめんなさい。もう……こんなことしないのです」
笑いながら謝るミレイ。
「本当かしら?」
「本当なのです」
ミレイは必死で謝るのを聞いてくすぐるのをやめる。目には少し涙が浮かんでいた。
でもこのやり取りはいつものこと。ミレイは少しは元気すぎる女の子。
「ごめんなさいなのです」
目に浮かんだ涙をぬぐいながら謝る。
「もうこんなことしちゃだめよ。ママ、心臓止まるかと思ったんだから」
「はい」
しょんぼりしながら答えるミレイ。
「反省はしてるみたいね。じゃあそんな子には」
ミレイの口に少し酸味のある野菜が入ってきた。
「ト・マ・ト?」
口の中の野菜を飲み込みながら、頭を傾げながら聞いてみると、
「正解! 今日はいいトマトが実ったのよ」
片手にトマトを五、六個持ちながら言ってくる。
「それにキャベツとキュウリもいいのが実っていたわ」
「今日のお昼はキャベツの炒め物とサラダなのです?」
今日取れた野菜から昼のメニューを予想してみる。
「そうね。それでいきましょうか」
特に決まってなかったみたいである。
ミレイとアレンが話していると、
「今帰ったぞ!」
片手に斧を持った男がミレイとアレンに向かって言ってきた。
「お帰りあなた!」
「お帰りパパ!」
話しかけてきたのはミレイの父、レイク=サルシャ。木こりをしている。いつもお昼には昼食を食べるために一度帰ってくる。
レイクが帰ってくるのと同時位に村の鐘が鳴る。
「ゴ~ン、ゴ~ン」
昼一の鐘である。
「もうそんな時間なのね」
昼一の鐘はお昼を伝えるものである。
「ママお腹空いた」
お腹を押さえながらミレイが言う。
「そうね。お昼にしましょう」
三人そろって家の中に入っていった。
その夜
家族三人で夕食中、
「ミレイも明日で五歳になるのか。早いもんだな」
父レイクがそんなことを言う。
「そうね。いよいよミレイも明日精霊の儀を受けるね」
母アレンも話始める。
精霊の儀とは、この世界で五歳になる子供が受ける儀式で初めて自分のステータスを見ることが出来る。自分がどんな能力を持っているかどんな魔法を使えるかを知ることが出来る。
「ミレイは、どんな能力が欲しんだ」
レイクの質問にミレイは、
「私は、能力は全てBランク位で、風魔法と火魔法、それに回復魔法が欲しいのです」
「なんでその三つなの?」
アレンはミレイの答えを聞き、何故かと聞いてくる。
「だって、火魔法は攻撃魔法は攻撃系の魔法の威力が高いし、風魔法があれば空飛べるでしょ。それに回復魔法があれば怪我したときでもすぐに直すことが出来るのです。それにステータスがBくらいあればトップ冒険者になれるのです」
この世界の能力は最初でほとんど決まる。もし最初のステータスがEならどんだけ努力しようとCまでの二段階しか伸ばすことが出来ない。だから冒険者になりたいと思っている子供達は、C以上のステータスであることを願っている。それに、使える魔法も最初で決まりその後増えることはないのである。
「ミレイは将来冒険者になりたいのか?」
「うん。だって冒険者ってかっこいいんだもん」
目を輝かしながら言うミレイ。
「だが父さんは心配だ。かわいい娘に何かあったらと思うとな」
少し悲しそうな顔でミレイを見ながら言う。それに対してアレンは、
「パパ、気が早すぎるはよ。何も今すぐに冒険者になるわけじゃないんだから。それに可愛い子には旅をさせろと言うでしょう」
アレンはミレイが冒険者になるの賛成のようだ。
「そうだな。母さんの言う通りだ。だがもう少しの間は家にいてくれ」
すごい過保護な父親であった。
「うん。私もパパのこと大好きなのです。だからそんなに心配しないでなのです」
今にも涙を流しそうなレイクに可愛い声で答えるミレイ。
「そんなことよりも早く夕食食べてね。片付けできないから」
レイクのことなどお構いなしに言ってくるアレン。
「は~い!」
元気な返事で返事するミレイ。それに対して、
「はい」
少し落ち込みながら小声で返事をするレイク。
夕食後、自分の部屋に戻ったミレイ。
「ミレイ早く私達を見つけてね」
どこからか声がしたような気がした。だが明日はいよいよ精霊の儀当日。そのことで頭の中は一杯で声のことを気にしている余裕がなかったミレイ。ベットに入るとすぐに寝てしまっていた。
そして、次の日の朝を迎えるのだった。
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