そして彼は命を絶つ

K

第1話

彼は生まれた家が悪かったのだらうか

それとも生来の性質か

彼は人として欠陥が多かった

人といふものは汚く

世間といふものは不条理なのだと気づいたのが早すぎたのだらうか

これはそんな男の物語である


〜家族〜

彼のことを知るにはまず彼の家族を知らなければならない。

彼の家族はある一つの宗教を信じていた。

教祖を絶対とし、純潔が神に愛されるとゐった、まあゝりふれたものである。

彼は子供ながら聡明で、敬虔な信徒であった。

一人伽藍とした祈祷室で黙々と神に日々感謝を伝えていた

彼は幸せであった。

しかし、その幸せが長く続くことはなかった。

彼の父が死んだのだ

彼が九歳のときであった

運命の坂を転げ落ちるのはそこが始まりだったのかもしれない






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