オーヴァードーズ・デッド ~ゾンビ化・薬物事案~

にのい・しち

1 ――――キメてるんでしょ?

 夜の歌舞伎町が活気を見せ、そのにぎわいは百鬼夜行を成している。

 踏み込んだ瞬間から、猥雑わいざつな空気感が漂うホテル街。

 とある三階の個室では、間接照明の薄暗さがベッドに座る女を、妖艶に引き立てていた。


 ビデオカメラの画面に映る女の顔は、頬が桜色のように染まり、まだあどけなさが残るが、甘える猫のよな目は男を魅了。

 黒い髪は背中まで伸び、前髪は四、五分けで額を出している。


 シャワーから出たばかりで髪は湿り、綿のようなバスローブを着込んでいた。

 被写体の女へ、ウィットに飛んだ男の声のみ・・・が語りかける。


「こんにちわ。それではですね、お名前を教えて下さい?」


「ミキ」


「ミキさん。ご年齢は?」


二十歳はたち


 声の質は少女と変わらないミキという女。

男の質問責めは続く。


「若いね〜。いきなりですけど、初体験はつたいけんはいつですか?」


 女は焦らす。


「えぇ~、そんなの言えないよぉ~」


「そこはぜひ、聞きたいなぁ……いつですか?」


「ん~。高校二年の夏ぅ?」


「誰とぉ?」


「合コンで知り合った大学生」


「へ~。やっぱり、気持ち良かったぁ?」


 女はハニカミながら嬉しそうに頷く。

 そのリアクションを聞くと、男は満足して返す。


「気持ち良かったんだ~」


 男の方は、さらに掘り下げた質問をぶつける。


「じゃぁ、そろそろ本番。始めようか?」


 女は細身の身体をモジモジさせて、うつむき誤魔化す。

 身体をクネらせるとバストやくびれが強調され、色気が際立つ。

 恥じらう女に構わず、話を先に進める。

 男は太くて、固くて、とても長いモノを女の前に見せて言う。


「これ、入れちゃう・・・・・と、どうなるか、わかるかな?」


 女は首を大きく横に振り、答える。


「わかんな〜い」


「わかんなくても、入れちゃうよ? 先っちょだけ、先っちょだけ入れちゃうからね? イレちゃう、イレちゃう、イレちゃう、あぁっ! ……イレちゃったねぇ」


 男は昇天したかのように溜息をつき、女の目の前でそれをブルブルと振り、辱めるように責め立てる。


「あらら、青く色が変わっちゃった。これ陽性反応が出たから、言い逃れできないね。それじゃぁ、もう一度聞くよ?」 


 男の声が針のように鋭く尖る。


「――――――――ドラッグ、キメてるんでしょ?」

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