第29話 2人は生きる
ティカルとコパンの使節の長とセスタとテルシオは、密かに会見した。
「貴兄らの母国のことは、よく耳にしている。良き王が即位し、国は安定している、民も喜んでいると聴いている。」
「良き王のご健康を祈っておる。我ら夫婦は、この国から出ることも、まして、貴国に行くことは有り得ないが。」
使節は翌日、帰国の途についた。
「叔父上は分かってくれるかの?」
「我らが思っている通りの賢君なら、我らを殺さねばならないとは思わないだろう。国益にも反するし。」
「お前の兄上も同様だと?」
「その通りだ。 」
ベッドの上で絡み合いながら、2人は、完全に母国を捨てる言葉を感じていた。
「そろそろ、本格的に子作りをするか?」
少し赤くなった、セスタは、声を小さくして言った。
「そうだな。頑張るよ。危ないことも、当面はなさそうだし。」
テルシオは、微笑して、体の動きを激しくした。セスタも、体の動きが激しくなり、大きな喘ぎ声をあげた。
魔王の力を得た2人は、受精も、妊娠も、ある程度制御出来ることも、妊娠期間を一週間になることも、得た魔王の知識で知っていた。それでも、次から次へと戦いがあり、それすら出来なかった。今は違う。部屋の外の魔法トラップに、数人のハイエルフの男女が無惨な姿を晒しているが、その程度は大したことではない。ハイエルフの内紛、そこから逃れて来たグループを受け入れたことに反発した、勝ち組のハイエルフのグループが送り込んだ刺客連中の末路だが、そう、大したことではないのである、2人にとっては。
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