第5話雌雄対決
「テルシオ殿!我が弟弟子よ!隠れておればよいのに、よくぞ出て来られた!その心意気、流石にわが弟弟子だ。」
「妹弟子のセスタ様がおいでになったのですから、自ら出迎えねば、失礼となりますからな。」
「では、まいるぞ。そなたの首は、婚約者に送って差し上げるから、心配いたすな。」
「返り討ちにしたあなた様の婚約者は、同じ墓に葬って差し上げますから、ご心配なさらないように。」
馬上の二人は、しばし大音声で、互いに牽制しあってから、馬を全力で駆けさせた。セスタは、最大火力の火炎弾を複数飛ばし、聖剣をかかげて斬りかかった。テルシオは、防御結界で火炎弾を一部を弾き返し、他を受け流しつつ、フェイントの氷結剣を飛ばしつつ、強威力の光弾を放った。聖剣の斬撃でそれを消し飛ばしたセスタの聖剣がふりおろされたが、テルシオはそれを受け流す。構わずセスタは、真っ正面から、全力で斬りつける。受け流し続けると不利な体勢に追い込まれるため、テルシオも度々激しく打ち返す。それを待っていたかのように、セスタが激しく打ちかかり、また、テルシオが受け流す。高位の聖剣のぶつかり合いの衝撃は他の者を寄せ付けない程のものだった。その間、二人は、ずっと至近距離で互いに魔法の攻撃を放ち、弾き返し、受け流した。二人が、一見、薄手で軽量そうな聖鎧を着ていなければ、直撃しなくても痛手を受けるくらいだった。何合も切り結び、一旦離れ、再び相手目指して突撃し、馬で駆け回った。二人の馬が同時に倒れた。巧みに二人は、飛び降り馬の下敷きになることを免れた。
「なかなかやるではないか。大人しく、馬の下敷きなっていればよかったものを。」
「女ならともかく、馬の下にはなりたくありませんから。」
今度は、徒で切り結んだ。一歩も引かずに、何合も何合も切り結んだ。セスタが攻防一体の真っ正面からの聖剣と魔法の攻撃、テルシオの防御を幾重にも展開させ、幾重もの、異なる魔法を使いながら同時に聖剣の変幻自在の動きと攻撃、それらの周囲への衝撃は更に凄まじいものとなった。そして、ついに48合目で互いの聖剣がポキンと折れてしまった。
「兄上。国王陛下。申し訳ありません!」
「ああ。どう言い訳をしたものか!」
二人は、しばし天を仰いだ。しかし、直ぐに剣を投げ捨て、相手に飛びかかった。拳と蹴り、絞め技、投げ技、魔法、彼らは、これも同じ師匠から受け継いでいる。もちろん、こちらの方も免許皆伝である。あらゆる体勢から、電光石火のごとく、セスナは拳を、蹴りを、当て身を繰り出し、素早く投げ技をかけ、絞め技を決めた。拳も、蹴りも、当て身も素早く避け、投げをかけられても、絞め技をかけられても、体を柔軟に動かして逃れた。テルシオは、全ての攻撃を完全にブロックするか、受け流し、攻撃の隙間をついて強力な拳、蹴り、当て身をぶつける、ここぞというときには、たたみかけるような素早い攻撃をかけ、相手の動きを読んで、その投げ技、絞め技を避け、外して、逆に投げ、締め上げた。二人目は、その間も同時に、複数の魔法攻撃を繰り出していた。攻防は一進一退で続いた。魔法を使える者は多いが、それでも少数派だが、ある程度有用なレベルのものを使えるのは、その中でも更に少ない。そういう者達でも、一日に使える魔法は数回という者が大半である。二人のように、回数を気にすることなく使えるのは、例外中の例外である。しかし、それも限度がある。ついに二人の魔法力が尽きる時がきた。
「まだ、まだだ!」
「何時までも相手になってやる。」
この頃になると、技と技の応酬ではなく、単なる殴り合い、蹴り合い、罵り合いになっていた。
「先生、申し訳ありません。」
「先生に怒られるかな?いや、若い頃はこんな闘いぶりもあったと聞いている。笑って許してくれるかな。」
その闘いも長く続いた。二人の兜はとうに飛ばされ、セスタの銀髪が揺れ、テルシオの黒髪も乱れた。相手の髪の毛をつかんで、というところまでいったが、体力に勝ってもいたテルシオが、倒れたセスタの上に乗って顔面を殴りつけた。もう一発というときに、彼は彼女が動かず、目が閉じられていることに気が付いた。
「セスタ様、大丈夫ですか?」
彼は思わず殴りつけるのを止め、彼女のほおをさすった。
「初めてだな。私の負けだ。」
と弱々しく微笑んで、すぐに目を閉じた。テルシオは、また驚いて、顔を彼女の顔に近づけた。息をしていることに気が付くと、安心するとともに、やるべきことを思い出した。
「コパンの常勝の戦姫、セスタ王女は、ティカルの王子、テルシオが打ち負かした!」
と拳を突き上げて、大音声で叫んだ。そして、立ち上がって、
「コパンのセスタ王女は、我が捕虜となった。高貴なお方に相応しい扱いをお受けになるだろう!」
と続けた。
「王子。追撃は?」
将校の一人が尋ねた。
「深追いはするな。速やかに撤収だ。」
と言いつつ、セスタを抱きかかえ、連れて来られた馬に彼女とともにまたがり、次々に必要な指示をだした。殿軍になりつつ、何とか撤収、マヤの王太子派の軍とも話をつけて、安全圏に達すると、セスタ王女の世話にするように女性騎士達に命じ、回復魔法を彼女にかけ、彼女の息が安定したのを確認したと同時に、テルシオは崩れるように倒れた。
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