第11話 入学式
合格発表から三ヵ月の月日が流れていよいよ入学二日前になった。
俺は両親に見送られて村を後にした。俺は、今回馬車を使わずに徒歩での移動にした。両親からはもう反対されたが、なんとか説得して了承させた。
村を出てすぐに気配察知を使って周りに人がいないことを確認してから、特殊魔法の一つテレポートを使い王都近くまで移動した。このテレポートは自分が頭に思い浮かべて所なら何処にでも移動することが出来る。だけども一つだけ難点がある。それは、使用者本人が一度行ったことのある場所にしか移動できないと言うところである。
王都の近くの人気のない所にテレポートで移動した。その後、街の中に入るために王都の門の所へと向かった。門を通ろうとしたところで、門番さんに声をかけられた。
「そこの君、どこから来たんだい? ご両親は何処にいるんだい?」
当然の反応であると思った。俺もこの前八歳になったとは言えまだ子供、そんな俺が一人で王都の門を通ろうとすれば声をかけてくるよなと思った。俺は門番さんに、学生書を見せると、すんなりと通してもらえた。門を通った俺は、街の中を見ながら学院へと向かった。
前回も来たときも思ったがやっぱりすごいなと思うばかりだった。
学院に着くと、門にある受付で学生書を見せてから中へと入った。受付で寮の場所の説明を受けていたので、迷うことなく着くことが出来た。
寮の入り口に寮母さんらしき人がいたので自分の部屋は何処か聞いて見た。すると学生書の提示を求められたの見せると、授業で使う教科書を渡された後に部屋へと案内された。俺の他にも来ている生徒は数人いたがまだ殆どの生徒が来ていないらしかった。部屋へと着くと、寮母さんから寮についての説明をされた。
この学院の寮は、FからAクラスで別々になっている。それぞれの寮の一階が一年生で上に行くにつれて学年が上がっていく。基本的に食事は寮の食堂で食べることになっているが、外で食べてもいいらしい。寮の中にはお風呂も完備されている。
寮についての説明が終わると、最後に部屋の鍵と二日後の入学式の予定だけを伝えて寮の入り口の部屋へと戻っていた。
俺の部屋は寮の入り口のすぐ近くにあり、一号室と書いてあった。
俺は、部屋の中で寮母さんから受け取った教科書を見たり、入学式で読む挨拶の最終確認をしたりしながら二日間を過ごした。
そして迎えた入学式当日、俺は、寮の前に向かえに来た先生の後ろに付いて入学式が行われる会場に他の生徒達と一緒に向かった。
入学式の会場入り口前に着くと、
「ケンイチ入学試験以来ね。元気してた」
急に肩を叩かれて振り返ってみるとそこには、シェリーとヒョウカがいた。
「久しぶりだね。ヒョウカにシェリー」
俺が二人に挨拶を返すとシェリーの機嫌が少し悪くなったように感じた。俺はそれが何故だか分からなかった。すると横から、
「シェリーは、自分の名前を私の後に言われたのが嫌だったんだと思うよ」
ヒョウカが教えてくれたが俺は、何故名前を後に言ったぐらいでと思ったが、このまま機嫌が悪いままだと言うのもいやだったので、
「僕、シェリーに再開できてうれしかったよ」
彼女のご機嫌を取るために耳もとで囁いてみた。すると彼女の顔が真っ赤になって下を向いてしまった。俺達がそのんなやりとりをしていると、会場の中より、
「新入生入場」
会場内から声が聞こえた。俺達はその声を聞くと、前にいた先生の後ろに続いて中へと入っていった。
中には王都に住んでいる新入生の親やこの国の重鎮の人が沢山いた。新入生が全員席に座り入学式が始まった。やっていることは、中学校や高校でやっていることと何ら遜色なかった。
そして、重鎮の人の話が終わりとうとう俺の番が回ってきた。
「新入生代表の挨。新入生代表ケンイチ」
俺の名前が呼ばれた。それを聞き席をたった俺は、代表の挨拶をするために会場正面の舞台へと登り、新入生の座っている方に向き直り挨拶を始めた。
「新たな季節の訪れとともに、セミアリア総合魔法学院に入学の日を迎えることにうれしく思います。どんな生活が待っているのだろうと不安と期待が入り混じった複雑な気持ちです。授業について行けるのか、友達とうまくやっていけるのか、不安は尽きません。しかし、この不安も楽しみながら一歩一歩確実にこの総合魔法学院の生徒として頑張っていけるよう努力してまいります。先生方、並びに来賓の方々、御面倒をおかけすることがあるかもしれません。優しく、時に厳しくご指導していただけると嬉しいです」
挨拶を読み終わった後は、会場に一礼して、舞台から降りて自分の席へと向かった。
その後学院長からの挨拶も済み入学式は終了となった。俺達は、先生の指示に従いそれぞれの教室へと向かった。
「ケンイチ君の挨拶よかった」
教室に向かっている途中にヒョウカから話しかけられた。
「ありがとう。でもかなり緊張してて心臓が口から飛び出しそうだったよ」
「そうなの。でもあなた本当に七歳なの?」
横からシェリーも話に入ってきた。
「いえ、この前八歳になりましたよ」
「そうじゃないわよ、なんであんな挨拶を八歳の子供が出来るのかって聞いているのよ」
すごく真剣に彼女が聞いてきたので、
「あれは、ママに手伝ってもらって書いた原稿ですので、僕一人で書いた訳ではないですよ」
「じゃぁどうして私よりも試験の結果がいいのよ」
今度は涙目になりながら聞いてきた。彼女は主席をとれなかったことが本気で悔しかったんだと思った。俺は彼女に、母の教えが厳しかったことを伝えると、
「そうなのね。じゃぁこれからが勝負ね。学期末の試験ではあなたに勝ってみせるわ」
彼女は、涙を拭きながら俺に宣言してきた。俺は、心の中で頑張れと少し人ごとみたいに思いながら彼女らと一緒にAクラスの教室に入っていった。
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