接続章 『夜のこと/旅の途中』3

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「シシュー様か……結局、会うことはなかったね。ひとつ前の先輩なのに」

「まあ、エイネが神子だと知られるより先に、星にかえられたからな。そりゃそうだろ」

 神子という、本来なら顔を見ることさえまれな存在に感情移入したのは、たぶんあのときだった──ラミは思う。

 騎士を目指す以上は頂点を目指すべきで、そうなれば必然、神子と関わることにもなるからだ。いったい神子は、どんな気持ちでこの星のために戦うのか。それを考えた。

「思ったんだよ。結局、いっしょなのかもしれないな、って」

 ラミはそう言った。

「……いっしょって?」

「騎士も神子も、根っこのところは変わらないのかなって話。それが押しつけられた義務なのか、それとも自分で選んだのか……確かにその違いは大きいと思うけど。でも最後はみんな理由を見つける。戦う意味をいだすんだ。なら、同じなのかなって」

「まあ神子も結局は、みんな自分の使命ってヤツと向き合うって私も聞いたけど」

「諦めとか開き直りじゃなく、ちゃんと前向きになれるなら。そしたらもう、あとは自分自身の問題だろ? だから心配しなくていい」

「…………」

「オレはオレで、今こうしてることに意味を見出してる。神子様の命数に巻き込まれたんじゃない。いやたとえそうだとしても──もう、オレはそうするって自分で決めてる」

「……そっか」

 ラミの言葉に、エイネはいつもの通りの笑みを見せた。

 不安になったのだろう。

 神子は、自らの命数に世界を巻き込む。旅に出たばかりで、もうあれほどの事件に遭遇しているのだ、それが自分の命数によるものなら、ラミが旅に出ていることさえ──その選択さえ運命とやらに仕組まれたものだとするのなら。

 そんなエイネの不安を、ラミはばっさりと切って捨てたのだ。

 だから少女はわずかに微笑む。いつも通りに、戻れたということを示す笑顔で。

「ならやっぱり、ラミは私の騎士様だ」

「その通りですとも、我が麗しき神子聖下」

「……騎士っぽいけど似合わないね」

「やっかましいよ、せっかく言ったのに……ほら、できたぞ」

 鍋からスープを器に注ぎ、エイネに手渡す。

 エイネは「ありがとう」と両手でそれを受け取り、ひと口飲んで笑顔で言った。

「うん。美味おいしい」

「そりゃどうも」

 自分の分も器に盛って、ラミもひと口、スープを飲む。

 そして、わずかに顔をしかめて、小さく言った。

「……ちょっと、塩気を出しすぎたかな」

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