第129話 獣人国出国

獣人国を出る日の朝。


俺達は屋敷前でダルア達と別れの挨拶をする。


屋敷は今や『気功士ギルド』の看板を上げ、大勢の気功士達が住んでいる。


獣人国に残るのは・・・。


ダークエルフのダルア、転生者にして魔抜け。気功士として俺の技を受け継いだ。気功士ギルドのギルドマスターとして、活躍している。


因みにサブマスターはキャル。

戦いには苦手だが内政面で活躍してくれている。総務的な役割かな。


ヌエのライヤと空狐のクーコ。護衛としてギルドの潜入者達を倒してきた。現在は潜入を試みる愚か者は皆無となった。


「じゃあ、後のことは頼むよ」

俺はダルアにお願いした。


「ダルに任せて!ライヤとクーコが残ってくれるから、戦力的には問題ないし、何より『気功士』となった皆も大きく成長したからね」


ダルアの後ろでライヤとクーコが大きく頷く。


「うん。戦力は心配していないよ」


「はは、収支もバッチリだよ。赤字になる方がどうかしてる。『殲滅の旅団』が貯め込んでた財宝を、全て貰ってるし、気功士の皆が、きっちり働いてくれてるからね」


「それは、分かってるけど、国中から魔抜けと呼ばれてる人達が、毎日の様に押しかけ、受け入れているのを見るとね。つい心配になるよ。その内、国外からも来るだろう」


「でも、それはダルとショータの目的『打倒魔法偏重社会』の為だから、労は惜しまないわ」


「私達も後押ししますので、ご心配なく」

獣人国ニャルマル商会の支店長である、猫獣人のニャラカさんが笑顔で話す。


ニャルマル商会には、本当にお世話になっている。


買取や解体等のノウハウが無い分野について、気功士ギルド内に商会の支店を出し、人員を派遣して貰った為、滞り無く物事を進める事が出来た。


そして、俺とペロとユキの3人は、身分証明書とする為、商人ギルドの商人証も貰った。


まあ、商会の商売上大きな利益を上げているので、WinWinの関係ではあるのだけどね。


「ニャラカさん、色々有難う御座います。これからも宜しく御願いします」


「はい。此方の方こそ宜しく御願い致します。人数が増えたら住居を用意しますし、他の都市にも気功士ギルドを開設出来る様に、手配済みです」


ニャルマル商会には、全く頭が上がらないよ。


この人も遣り手なんだよなぁ。

先々を見越して手を打ってくれる。


「本当にお世話になっています。ニャラカさんがいてくれて心強いです」


「いえいえ、此方こそ素材の買取や料理のアイデア等で、大きな利益を得ていますので、儲けさせて貰ってます。副会長のシャルからも厳命されていますからね」


おお、懐かしいな。猫の王国のニャルマル商会でお世話になったシャルさん。


「シャルさんは今どちらに?」


「ふふふ、秘密にしておいてって言われてるのですが、サーキ王国にいます。内緒ですよ」


「え! 本当ですか?」


これから俺達が向かう国じゃん。

ハルカの仇の元貴族がいる人間の国。


ニャルマル商会の情報収集能力も侮れ無いな。

モヤジーの情報屋が噛んでるのか?


「そろそろ行くよ」


俺がニャラカさんと話している間。ダルアはエリとハルカと抱き合って、別れを惜しんでいた。


ペロとユキもその横で、何やらダルアとライヤ、クーコに話し掛けている。


「またにゃ」とペロ。

「また会いんしょう」とユキ。


「ダル、無理しないでね」

とハルカ。


「妾の精霊達が護衛として残るので、念話で情報交換出来るのじゃ」

とエリ。


「通信の魔道具もあるから、直接話も出来るわ」


「そうじゃのう。元気でな」

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