第91話 馬車を助けた

俺達は獣人国に向かっていた。

俺とダークエルフのダルアはドラゴンのドラムに乗っている。


俺の影に『闇猫』ケット・シーのペロが潜む。

俺の周りに粉雪状の雪女ユキが漂う。

ドラムは低空飛行中。


少し後方にヌエのライヤに『疾風』エルフのエリと『風刃』ハーピーのハルカが乗る。

空狐のクーコがライヤの横を飛び。

魔神パズズのバズが風になってエリが纏う。


急にダルアが俺の肩を叩く。

「馬車が襲われてるみたいだねー」

「うん。そうみたいだね。ドラム、ちょっと止まって、様子を見よう」

「承知した」


ドラムは宙に浮かんだまま、遠目に馬車が見える位置で止まる。

ライヤとクーコもドラムの横で空中に浮かんだまま止まった。


馬車を数十匹のヘルハウンドが取り囲み襲っていた。

迎え撃つ5人の獣人達。

ちょっと危なそう。


エリが俺に話し掛けてきた。

「主様、馬車を助けるのかのぅ?」

「う~ん。普通は助けるんだろうけどね、目立ちたく無いんだよね」


ペロが影から顔を出す。

「様子見だにゃ」

「そうだね。ペロ、もしもの為に先行して馬車の影に転移してくれないか?」


「分かったにゃ」

ペロは影に消える。


その時、数人の獣人が走って馬車を助けに来た。

「助けても良いか?」


「助かる!頼む!」

戦闘中の獣人が答えた。


冒険者のルールでは、魔物は戦闘中のパーティーの獲物。

下手に手を出すと、後で問題になる為、助ける前に確認が必要だ。


獣人達の会話を、ペロの持っている通信の魔道具で聞いている俺達。


「どうやら戦闘中の獣人も、助けに来た獣人も冒険者の様じゃ」

エリが俺に教えてくれた。

「ふ~ん。そうなんだ。困ってる人達を助ける奇特な冒険者もいるんだね」


獣人の冒険者達はヘルハウンドに手こずりながらも、優勢に戦い始めた。


「これで、手を出さなくても無事に終わりそうだね」

ハルカが安心した様で声を掛けてきた。


「そうだね・・・。ん!」


しかし草むらに潜んでいたヘルハウンドが、護衛の獣人がいない方向から馬車に向かって走って行った。


襲ってきたヘルハウンドに向かって、馬車の中から勢い良く獣人の子供が放り出された。


蹴り出されたのか?

転がる。


その後、馬車の反対側のドアから、狸の獣人が逃げ出す。


ペロが小声で呟く。

「魔抜けの子供にゃ」


「ペロ、助けてあげて!」

ダルアは叫ぶと直ぐに、ドラムから飛び降りて馬車に走った。


「エリとハルカ達は此処で待って」

通信の魔道具の片方をエリに預けて、俺も慌てて後を追う。


獣人の子供は脅えて背中を丸めて震えている。

ヘルハウンドは獣人の子供の首に向かって牙を立てる。


瞬間。


ペロの闇槍がヘルハウンドの頭を貫いた。ペロは影から出て獣人の子供の前に立ち身構える。


ダルアは走りながらアイテムバッグから銃を出し右手に握る。


ダルアもペロの横に並ぶと銃を構えて、ヘルハウンドを射殺していく。


俺も追いつき辺りを見回す。

戦いは獣人達の勝利で終わっていた。


戦っていた狼の獣人が助けに来た冒険者達と会話していた。

「助太刀ありがとう。助かったよ。俺はBランク冒険者クラン『殲滅の旅団』のロウガだ。俺はDランクだけどね」

ロウガは助けに来た犬の獣人に右手を出す。


殲滅の旅団!

確かハルカの仇がいる冒険者クランだ!


犬の獣人はロウガの右手を握り答える。

「俺はCランクパーティー『月白げっぱくの爪』のドルダだ」


逃げた狸の獣人が小走りで戻って来て、俺達に話し掛けてきた。

「私は商人のポンタです。皆さんこの度はありがとう御座いました」


ダルアはポンタを睨む。


面倒な事になってきたぞ。

さて、この後どうしようか?

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