第3話 なんちゃって気功が出来ちゃった

厭な気配がして、後ろを振り向いたらゴブリンがいた。


「ギィググァゲゲェ!」

ゴブリンは不気味な声を出して、棍棒を振り翳し襲ってきた。


ゴブリンは魔物としては弱い部類だが、基本的に魔物は魔力があり、常に魔力により肉体強化されている。


従って、魔法により肉体強化している人間の攻撃、または魔法による攻撃しかダメージを与えられない。


魔法が使えない『魔抜け』の俺にはダメージを与えられない。


崖から転げ落ちた時に偶然倒したスライムは例外中の例外。


あの時は崖から転がり落ちた勢いにより、魔法で肉体強化した以上の攻撃力があったのだろう。


ゴブリンは魔法による肉体強化で力は強いがスピードはそれほど速くない。

集団で狩りをする種族だ。


「1匹見たら10匹いると思え!」と言われるように、大変繁殖するのが速い魔物。


今は幸いにも1匹しか見当たらない。


まだ遠くにいるので、走れば何とか逃げ切れそうだ。


俺は崖から転がり落ちて全身怪我の痛みを堪えて走って逃げた。


何とか逃げ切れた様だ。


厭な配を感じて、早めに気付いて良かった。


ん?


気配?


音でも匂いでもなく、魔力探知の魔法が使えないので、魔力でもない。


配って何だ?



転生前の記憶で気について考える。

勿論、本物の気功は知らないので、マンガやアニメの知識。


両手をあげて、周りの植物、昆虫、小動物から気を貰う、気を集めるイメージをしながら、恥ずかしいので小さな声で、アニメを真似て口に出す。

「みんな!オラに力を貸してくれ!」


何だか気が集まって来た気がする。


俺の身体の中に周りの動植物の気が入って来る。


暖かい、優しい何か。


まるで孤児院で回復魔法をかけてくれたミクの魔法の様な、そしてそれ以上の暖かさ。


全身の痛みが無くなっていた。

驚きながら身体を見る。


怪我が完全に治っていた。

さすがに血は消えていないが、擦り傷、切り傷、内出血、打撲の跡も無い。


おお!


魔法は使えないが『気』は使える様だ。


身体に染み込んだ気を右手の掌に集める。


「はっ!」

右手を曲げた状態から一気に伸ばす。

手を開いた状態の正拳突き?

掌底打ちか?


同時に右手の掌に集まった気を放出するイメージ。

空気で出来た大砲の弾を前方に放つ。


前方の木が数本折れて吹き飛ぶ。


「すげぇ!」

思わず声が出るほど驚いた。


しかし、自分の身体の中にあった気も放出したらしい。


とても疲れた。

立っていられなくなり膝をつく。


これは、ヤバイな。

一発でこんなに疲れるなら何度も使えない。

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