17幕:人形使いは女王と出会う
守衛所を抜け関所を抜けるとそこは外とはまた違った景色だった。
白一色に統一された世界の中でさらに一際輝く白い大宮殿。
僕には異世界過ぎて何が何だか理解ができなかったんだ。
正直、思い出そうとしても思い出せない。
案内された部屋で僕は従者さんから色々と話を伺った。
現国王代理の簡素な紹介やお城のこと、それから宮中作法の手ほどきなどを受けた。
数時間くらいだったけど僕よりも年上で綺麗な従者さんに目を奪われながら何度も頭の中で失礼がないようにイメージトレーニングをしたんだ。
------やっぱり年上メイドさんは最高だ。
それから僕は謁見の間へと案内された。
決められた所作通りに行い片足を地につけ儀礼を行う。
それから側付きの方、、、宰相さんかそれとも大臣さんかは知らないが彼の掛け声、そして高い壇上の上から見下ろす絶世の美女の一声の後に僕は立ち上がったんだ。
それからは流れに身を任せながら僕の前の小さな背中を眺めた。
そしてあの絶世の美女とを見比べた。
偉大にして壮大。
絢爛豪華な衣装に身を包み頭には大きな宝石がついたティアラを、そして膨よかな胸元にもまた違った種類の宝石を身につけた彼女はこの世のものとは思えないほどの存在に思えた。
まさに王族中の王族。
貴族には纏えない雰囲気で場を支配しており何者をも寄せ付けない力を持つ女性だ。
そんな彼女が向ける視線は何というか、、、鋭利な剣の刃のようなそんな冷酷な感じがする。
そう一振りの刃を首元に向けられた時のような感じだ。
ただし所詮、僕はただの付き添いなんだ。
だからそんなことを気にかけないように、ただひたすらこっそりとその見目麗しいお姿を視界の隅に留めるだけにしたんだ。
尚も壇上の美女と目の前の幼女のやり取りは続いている。
そんな時だったパトからこっそりと呟きが聞こえたんだ。
「ん。奴隷、、、聞かれてる。昨日言われた通りに答えるべき」
「、、、。え?何を?」
「貴様、尋ねられたことさっさと答えんか!?」
側付きの方からも声がかかってしまった。
一体何のことだろうか。
「はい、ぜひに」
「ん。奴隷のバカ、ドアホ」
幼女の怒りの籠った呟きが聞こえるんだが、、、
「なに?陛下の奴隷になりたいと申すか」
ん?何だって?
もう一度言って欲しいんだけど、、、
「じょ、冗談でございます。実は少し聞き違いをいたしまして、、、恐れながらその可憐で高貴なる美声をお聞きしとうございます」
「このような場で冗談とは見上げた度胸だ。所詮は流れの冒険者風情だが、、、、貴様喜べ。陛下の召使いか、奴隷か、駄犬か、好きなものを選ぶがよいとの仰せだ」
大人のパトかな。
姉妹揃って言うことが変わらないなんて。
あの男の一言で僕は目覚めたんだ。
何だか緊張していた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
「恐れながら私には勿体なさすぎる話でございます。私は他国の冒険者ギルドに身を置く者です、まずはそちらを通さずには返事ができません。それに出世には興味はありませんので、、、」
「空いている爵位をくれても良いのだけどね」(陛下)
うっとりとこちらを見つめる様はまさに絶世の美女。
もし僕に想い人がいなかったら僕はこの場であの女神の駄犬になり下がったことだろう。
それに爵位、、、駄犬代の月額のお給金はいくらだろうか。
奴隷なら月額どのくらい貰えるだろうか。
あと貴族年金完備なら言うことはない。
それからボーナス付きなら僕は駄犬にでも成り下がる。
「どうかしら私めの犬として一生こき使われるのは?」
「そんな勿体なきお言葉」
「あら勿体ないだなんて嬉しいわ。ちゃんと毎日足を舐めさせてあげるし餌も与えるわ」
「肩もみもマッサージも得意です」
「ん。後で背中踏んづける、、、」(こっそりと)
「僕にはご褒美以外の何物でもない」(堂々と)
「ほぉ、、、ますます気に入ったわ。パトレシアあなたの駄犬を私にくださいな」(陛下)
「姉上、ご冗談を」
「あらそんな呼び方をして、、、取り上げてもいいのよ?」
「国王代理、、、残念ですが、それは通りません。それにこの者はすでに私の奴隷であり、私の忠実なる犬。すでに命を私に捧げております」
ん?聞き間違いかな。
僕の命は誰にも捧げてないんだけど。
それに奴隷にも駄犬にもなった覚えがない。
「あら仕方ないわね。しばらくはあなたに預けて置こうかしら。でもあなたも私の物だから、いつでも帰ってきていいのよ、、、この私のところにね」
陛下代理はそう囁くとうっとりとした視線を僕に送ってきた。
冷酷な視線から飛びつきたくなるほどの情景を感じる様変わりした眼差し。
何だか無性に彼女の胸の中に飛び込みたいんだけど。
その後、簡易なやり取りの後、僕は王城を後にした。
あれが王国の頂点にして現女王。
いや国王代理である第一王女。
パトの腹違いの姉であり政敵であり、パトや『下町』を塵にしようとした人物。
そして人をゴミのような目で見下すことができる美女。
流石はこの王宮を手中にしたバケモノである。
あの幼女すら簡単に寄せ付けないほどの器量と余裕を持つ彼女は危険だ。
今後、二度と関わることがないように絶対に王国に近づかないように行動するべきだ。
謁見の後、僕たちは王宮見学に足を運んだ。
パトと二人である。
流石は王族、、、誰も彼女を諌める者は見当たらない。
それどころか目にした途端、誰もが一目散に逃げ出した。
一体彼女は何をしたんだろうか。
そんなことを考えていると、、、パト殿下から静かな声がかかった。
「ん。さっきは奴隷がんばった」
「えっ!?珍しい、、、僕は今日死ぬのか、、、」
「ん?これは奴隷に鞭いれるべき?」
変な顔になったパトのお願いを叶えるため、王城内のほぼ全ての場所を訪れとある行為をした。
これがバレれば僕はこの世にはいられないんだが、バレることはないだろう。
騎士の詰所や、文官たちの仕事場、会議室、キッチンから隠し部屋に至るまで、、、その場所に置かれている調度品を人形化しながら僕は場違いな空気と恐怖を味わい続けたんだ。
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グリンティア(# ゚Д゚) :女の匂いがする、、、
恐れ入りますが、、、、シュガールの目覚め、パトの変わりっぷりに期待したい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。
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