11幕:人形使いは責任を取らされる 上
長く繊細でしなやかな淡い緑色の髪に大きなオッドアイの瞳。
僕と同世代だという彼女はまだ幼さを残すものの大人顔負けの美しさと全力で守ってあげたいほどの儚さを合わせ持つ素敵な美少女だった。
ほっそりとした華奢な感じだが胸に抱えるものは小さくはない。それに幸が薄そうな雰囲気を持つけど、自分に見せてくれる笑顔には幸せに包まれているそんな感じのする娘だった。
そんな彼女の名はグリンティア。
ウェーブのかかった髪を一つに纏め横に垂らしている様は落ち着いた大人っぽく見えるし、頑張って背伸びしている可憐な乙女のようでもある。
上の姉が似たような髪型だったんだが何という髪型だったは思い出せない。
僕を初めから視界に入れなかった姉とは違い彼女は優しく気遣いが効く良い娘で不慣れな僕を入店当初からよく助けてくれていたんだ。
だから恩義を返すため親しい友人のように接しているとなぜか彼女のことが気になリ始めた。それに最近は保護欲が湧くんだ。
だから気にせずにはいられなかった。
「どうしたんだいグリンティア、、、」
「シュガール、、、私悔しいの」
「悔しいって、、、それでも君は年間総合ではトップじゃないか。すごいよ」
「だって私はあの子達に負けたのよ!!あのぬいぐるみたちに!!あのチャラけた新人たちに!!あの、、、」
「あれらは、、、特殊だからね、、、」
「バカシュガール!!それでも私は悔しいの!!」
彼女、、、グリンティアはこのラウンジの前NO.1嬢だった。
そしてこのラウンジだけでなくこの町の中で1、2位を争うほどの優れたホステスだったのだ。その名は王国首都にまで轟いていると聞く。連日連夜様々な貴族や王族関係者がここを訪れていたのだそうだ。
地理的にも要所的にもこの町が王国首都の玄関的な役割を果たしているのでその兼ね合いがあるのかもしれない。王都まで目と鼻の先だしね。
ただしそれもつい先日までだった。
たが今は違う。
突如龍の如く現れた驚異の新人たちに売上も指名数も簡単に抜かれてしまった。
今や噂が噂を呼び指名数は桁違いになっているし成績も史上最高額に達しようとしている。
オーナーもここぞとばかりにお客数を掻き入れるのではなく新人たちの指名料金などをその分引き上げることで上手く対処済み。
もうすでに当初の何倍も値上がりしてるんだけどね。
僕はその手腕に関心しながらも彼女のことが気になった。
王都からも有名貴族や名のある冒険者、王族関係者に至る人間まで彼女目当てに連日連夜駆けつけていた。それも大行列ができるほどに。
彼女は驕ることなく全ての人たちを持て成し癒しと活力を与え続けてきたのだ。
そして与えられたNO.1、女王という名の称号。
しかし彼女のポジションはいともたやすく地に崩れ去った。
隙を突かれ横からその地位を攫われたんだ。
驚異の新人達により彼女は今や中堅クラスまで落ち込んでしまった。
だがそれは事実とは異なる。
実際は違うんだ。
これは掻っ攫われたんじゃない、、、
真後ろから強奪されたんだ!!
それも作為的にね。
それも彼女がNO.1であること、抜群の知名度と人気があることを彼女の持つ人心掌握術を知っていて、、、
僕は真実を伝えたかった。
だけどそれはできないんだ。
なにせ僕の首には足枷が嵌められているんだから、、、
だから僕は精一杯の気持ちを彼女に囁く。
「いいかいグリンティア。君は最高に魅力的な女性なんだ。だから僕と一緒にNO.1を取り戻そうじゃないか」
「シュガール、、、」
僕が彼女の瞳の中に輝きを見出そうとしていた頃、廊下の奥から忍び寄る恐怖の歩みが差し迫っていた。
その歩みは一歩一歩少しずつだが僕たちに近づいていたんだ。
だから僕は油断していた。
「さぁ貴様ら頭を地面にひれ伏せ土下座しろ!!NO.1嬢のご指名だぞ!!」
黒い服を着た屈強な男たちによる先導、そして続くのは4足歩行のお馬さんとなった大の成人男性。そして背中に跨るのはこのラウンジの新たなる女王。
その背中にはその女王様がこちらを見下していたんだ。
グリンティアから頂点という地位を強奪しこのラウンジのトップに躍り出た次世代の女王。
そして僕にとって目の上のゴブリンであり今回のクエストの依頼主でもある。
そんな彼女は抑揚のない声でこちらに言葉を発した。
「ん。奴隷は頭が高い!!黙って地面に這いつくばるべき」
そこには新たな女王となった幼女が僕とグリンティアの前に躍り出たんだ。
浮ついているシュガール(*´ω`*):必要なのはヒロイン!!
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