3幕:人形使いは冒険者になる 上
あれはまだ日差しが弱い晴れた日だった。
野原に花が咲き乱れるより少し前の季節だったと思う。
お日様が差し込んで目が覚めたのでそれから時間までそわそわして落ち着かなかったもんだ。
僕は体が何とか動くようになってから町の冒険者ギルドを訪ねることにした。
身分もお金もない僕が唯一頼れる場所だったからだ。
傭兵ギルドがあるじゃないか?
論外さ。
まだ僕はそんなに強くないし、もちろん相手にされることもない。
教会?
あそこは目に毒だ。
麗しき女性たちの花園なんだから僕のような卑しい人間が行くべきところじゃないんだよ。
あそこはあの時の僕には眩しすぎたんだ。
まぁ炊き出しだけは毎回参加させてもらったんだけどね。
僕はあの乙女たちのおかげで生き延びたと言っても過言じゃない。
とにかく生き残るため自分の目的のためにありとあらゆることをやりながら僕は冒険者ギルドへと向かった。
建物は小さいが凄く立派な建物だった。
臆せず中に入り目的の場所へと足を進めた。
受付で登録を済ませ簡易なやり取りを済ませこれからの行事を確認すると、、、
数度の訓練の後に実技試験が数回。
採取試験と担当教官との戦闘訓練試験、あとは何回か最低限のクエストをこなせば晴れて冒険者になることができる。
小さい頃から勉強をしていたおかげで無事戦闘訓練意外は乗り越えたんだ。
無事ね。
ただ問題は教官との戦闘訓練だった。
僕が今までやってきたことは剣を振ることがメインだった。
毎日少しずつ素振りをしたもんだ。
他にも本の中に色々と訓練方法が書いてあったし家庭教師の元冒険者のお姉さんにもアドバイスを受けてから考えつくことは全てやってきた。
それが活かされる時が来たんだ。
戦闘訓練の実技担当は女性の冒険者だった。
いや元男の乙女だ。
高ランクの冒険者だと聞いていたのだが、見た目からしてそれ以上かもしれないと確信した。
僕より太い腕は丸太のようで胸元はドラゴンのように厚かった。
もちろんドラゴンは見たことはない。
またシャドーのように鋭い眼差しはなぜか僕に視線を向けると逸らされた。
でも向けられる眼差しは刃物のようだ。
獲物は立派で大きな斧。
確かバトルアックスとか言われてる武器だ。
もちろん刃はついてないし保護具もつけられている。
対する僕の獲物はギルドで借りた訓練用のショートソード。
正道の構えで目の前の化物と対峙する。
隙があれば急所に本気で叩き込むつもりだからだ。
だけど勝負は一瞬にしてついた。
僕の剣は簡単に切断され空の彼方に追いやられ、そしてその隙に無理やり羽交い締めにされたんだ。
男の中の乙女から無理やり頬ずりをされ抱きしめられ寝技を仕掛けられ、、、
ーーこの世の地獄だった。
その日、僕は世界を知ったんだ。
何とか僕の貞操は無事守られたんだが、、、受付のお姉さんや他の冒険者のお姉さんたちのとても可哀想な目で見つめる様が今でも印象に残っている。
どうしてこの人たちは助けてくれないんだろうか。
なぜ僕だけ試験内容のレベルが高いんだろうか。
なんでこの担当をクビにしないのだろうか。
帰り際、、、、何人かの先輩冒険者たちのお姉さんが抱きしめてくれたことだけが幸いだった。これがなかったら僕はきっと暗黒面にどっぷりと落ちていたと思う。
そうそうこの日、僕の目的に一つ追加されたことがある。
これは言わなくてもわかるだろう。
それから必死で特訓した。
僕が小さい頃から努力してきたことは木っ端微塵にされてしまったが、ならばもっと努力すればいいい。
幸いなことに何でもありな条件の試験だったので僕は僕だけにしか使えないあの能力を使うことにしたんだ。
魔術は使えない。当然魔法も使えない。
でも僕は魔力を操作できるし、そして何より人形を操ることができる。
次の再試験ではあの化物を完膚なきまでにぶちかましてやるんだ。
再試験の日、僕は3体のぬいぐるみたちを用意した。
あの漢中の漢の乙女を倒すための可愛い刺客たちである。
子供達に教えてもらって町の雑貨屋さんで買ってきた。丈夫だけど可愛いしお手頃価格の精鋭だ。
おかげで手持ちの財産は無くなったが合格すればクエストを受けることができるので今までより稼ぎは増えるはずだ。
そうさ、、、僕はあの化物をこの世から消し去るんだ。
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教官(●´З`)ノ :ブチュー♪
シュガール(Oд O∥):、、、(無言)
他の参加者たち(´;ω;`):また犠牲者が,,,,,
にんじん太郎さん(https://kakuyomu.jp/users/ninjinmazui)のご好意により紹介動画を作成していただきました。
合わせてチャンネル登録もどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=2Cjy5Owlhf0
ぜひご覧ください。
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