第51話 北高祭の出し物を決めよう ①

「昨日まどろみさんと亮くんを残して先に帰りましたけど、あのあとどうなったでしょうね?席替えの時、前後ろの席になってすごく嬉しそうでした」


 放課後、美咲と泉は一緒に部室に向かった。


「あれって絶対に先生がうまいこと操作してるよ。気の利いたことするね…でもあの2人のことだから、何も変わって無いんじゃないかなあ」


 そう言って部室の扉を開けると、亮と微睡びすいが椅子を引っ付け肩を寄せ合っていた。


『失礼しましたー』


 そのまま扉を閉めて顔を見合わせる。


「ええと…」

「2人、変わりましたね」

「そ、そうね」


 そこに香風このかが来た。


「何やってんのよ?先に入るわよ」


 扉を開けようとする香風の腕を美咲は掴んで階段の踊り場まで連れて行った。


「痛い痛い、なんなのよもうっ」

「いきなり入ってどうすんの?ちょっと覗いてから入らないとダメよ!」

「はあ?今までは覗いてたら腕を掴んできた女が何言ってんのよ」

「だ、だって今中に入ったら…」

「入ったら…あ、亮とまどろみさん、進展したの??覗かなきゃっ」

「あ、ちょっと待って」


 香風が部室を覗こうと走って戻ると、真知子先生が扉を開けようとしていた。


「あ、先生、待ってください」

「お、御前浜、なんだどうした?」


 イチャコラしてる2人を見られたらマズい。美咲は慌てて先生を止めようとしたが、間に合わなかった。


「入るぞー、お、今日もあっついな~、ヒューヒュー」

『小学生か~っ』


「しかし、女子校出身の小清水や恋愛禁止のアイドルには刺激が強いぞ。時と場所を考えて、な」

「はぁい」


 口を尖らせ返事をする2人。イタい、こっちも小学生か。こんなイタいキャラじゃ無かったのに。恋愛脳で幼児退行?!まさかね。


「さて、6月に北山高校祭、通称北高祭があるのは知ってるな?体育館のステージで活動を発表するなら事前申請をしなきゃならん。あとでまた来るから、どうするか考えといてくれ」


 真知子先生は職員室に戻っていった。


「では、どうするか決めよう」


 さすが部長だ。切り替えが早い。2人の仲を聞こうと思ったのにピシッと言われたから聞けなくなった。でもまだ肩を寄せ合ってる。あ、これ写真に撮っとこう。


「お2人さん、ラブ・アンド…」

『ピース』


 2人ともダブル・ピースしたぁ~。やっぱりイタいかも、この2人。


「良いなぁ、私もあんなことしたいです」

「あんたたち恋愛禁止アイドルに当てつけてんのっ?うらやましい」

「そんなつもりは無い。仕方がない離れるとしよう」

「うん、離れよう」


 ようやく2人は離れた。10cmほど…。


「もっと離れなさいよっ」


 今日中に北高祭の出し物決まるかなあ。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る