第48話 策士宮子の目的は達成された
「ライブって?」
うっかり口を滑らせた
扉が開いた。宮子が入って来た。
「それについては私が説明しましょう~」
顔の横で人差し指を立ててニコッと笑い、
「香風さん、同好会の中で隠し通すのはもう無理です。みんなに秘密は守るって約束してもらって話しちゃいましょう。その方が楽ですよ~」
なに?この展開。入ってきたタイミングが良すぎる。もしかして…宮子も扉の隙間から覗き見をしていたの?
「で、でも…」
「亮くんもお嬢もまどろみさんも、うっかり喋ったりすると~」
『ごくり…』
「あたいが許さない」
宮子、そろそろキャラ変えようよ。
「わかった。あんまり参加出来ないかも知れないから迷惑かけるし、知っといてもらったほうが良いかな…でもホントに絶対言わないでよ」
『わかった』
宮子は香風がコロリョフの十字架という地下アイドルグループのメンバー・アニカで日曜日になるとライブ活動をしていることを話した。
「びっくりです。それって、学校にバレたらどうなるんですか?」
お嬢が聞くと香風が胸ポケットから生徒手帳を取り出した。
「地下アイドル禁止なんてどこにも書いてないでしょ、だ、大丈夫なのよっ」
宮子の真似だ。
うむうむと頷きながら宮子が言った。
「でも、それよりももっと秘密にしとかなきゃいけないのは…」
『それは…?』
「口パク問題です。これはアイドルにとって致命的な問題です」
『た、確かに』
それを知ってるってことは、絶対に扉の隙間から覗き見してたに違いない。
再び扉が開いた。
「入るぞー、地下アイドル・アニカ、あとで職員室…はマズいな、階段の踊場に来い」
真知子先生どの
真知子先生の提案により、4人での活動はオリジナル曲を作ったり、カバー曲を演奏したりしていくことになった。これって香風のアイドル活動と似てるなあ。
香風については顧問預かりとなった。
「じゃあ部長、今後の活動も決まったし、これからもよろし…」
『寝てるー』
安心したのか、机に突っ伏して寝ている。
「このひと月ほどの疲れが出たんだろう。部活動時間の延長申請は書いといてやるからしばらく寝かしてやれ。あとでコーヒーを飲みに戻るから、その時には帰れよ」
先生は香風の首根っこを掴み、階段の踊場に連れて行った。アニカの件を尋問するんだろう。職員室に連れて行かないということは…穏便に済ましてくれたらいいなあ。
「香風、大丈夫かな」
あたしはみんなのお茶を入れる。香風とはここ数日色々あったけど、心配だ。
みんな静かにお茶を飲んで香風の帰りを待った。
「入るぞー」
先生の物真似をして香風が戻って来た。
「どうなったの?」
「いずれは届けを出せって言われたけど、今は地下アイドルの件は宮前先生で止めといてくれるって。それよりも、部活だから営利じゃないけど、似たような活動をしても権利関係は大丈夫なのか事務所に聞いとけって言われた。あの先生嫌いだったけど良い先生なのかもね」
「悪い先生では無い、かな」
「それと口パクは絶対ダメだと言われた。ファンを裏切ってるぞって…」
「事務所で歌のレッスンは無かったのか?」
「歌唱指導は受けたよ、でも何ともならなかった。だからダンスを頑張ってオーディションで受かったんだ…。でも先生が言ってた、あの4人ならなんとかしてくれるハズだから、部室に来たらとにかく歌えって」
なにその期待感?あたしたちにどうしろと??
「ということになりました。よろしくね」
「良かった~アニカちゃん。これで部室ではコロリョフの十字架の話が出来るね~」
策士宮子、それが目的だったのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます