コミュ障吸血鬼、自分の持つスキルを知る
そんなに敵討ちがしたいってことは、リオナも根に持つタイプなのかな。
まぁ、アンナに風呂場で言われたことを未だに根に持ってる僕には及ばないだろうけど。
それにしても、リオナが勇者の末裔か……。
どう見ても、少し変わったただの(?)女の子にしか見えない。
でも、勇者が日本人だったなら、スリーサイズの概念があったことも納得できる。
けど、やっぱりリオナの言動を見る限り、全く勇者の末裔に見えない。
むしろ見える方がおかしい。
「ねぇ、私の秘密教えたよ? だから許して? ねぇ、聞いてる? ティアナってば~」
こんなアンナ2号になりつつある人なんだから、見えるはずがない。
というかリオナ、僕の肩を押したり引いたりするのやめて。
頭がカックンカックンして脳が揺れる。
腹が立った僕は、リオナの脇腹を勢いよく押した。
と思いきや、リオナの体を押すことができなかった。
まるで大岩でも押しているかのように動かない。
リオナの手が肩にあり、僕がリオナの脇腹に手を当てているという、端から見れば珍妙なポーズのまま沈黙が流れる。
「……」
「……」
僕が再び押してみるも、リオナの体はびくともしない。
ここから導き出される答えは一つ。
今がやっぱり午前だということ。
カーテンで部屋を暗くしても、太陽が出ていれば力は弱まるみたいだ。
でもまさか、人を押し倒すことすらできなくなるなんて思わなかった。
今の僕……ゲキヨワじゃん。
あまりのショックにうちひしがれる。
「そ、そんなに落ち込むことないよ。夜になればティアナは最強なんだから。ね?」
「……」
リオナが優しく言ってくれるも、今の僕には響かない。
現状ゲキヨワであることは変わることのない事実なんだから、落ち込まないわけがない。
だって、非力にも程がある。
リオナが耐えてるわけでもないのに、びくともしないんだよ?
いくら今の僕くらいの女の子でも、ここまで非力な人はいない。
強いて言うなら赤ちゃんくらいだと思う。
でも、赤ちゃんって結構力が強いって聞いたことがある。
けど、今の僕は、さっき押してみてわかったけど、思ったように力が入らないから、殴っても蹴っても痛くなることはないはずだから……
――今の僕、赤ちゃんより弱い!?
自分で言って自分でショックを受けてしまった僕は、ベッドにうつ伏せに倒れ込み顔をうずめる。
「えっ!? ティアナ!? 急に倒れてどうしたの!?」
「……なんでもない」
言えるわけない。
自分でショック受けるようなこと考えてたなんて、口が裂けても言えない。
恥ずかしすぎる。
今の僕は、ショックと恥ずかしさが混じって、よくわからない気持ちだ。
「本当に? 本当になんでもない? 5秒以内に嘘か本当か言ってくれなかったら、【鑑定】使ってティアナの個人情報、勝手に見るからね?」
そう言ったリオナがカウントを始めた。
「ご~」
まぁ、べつに見られて困ることは特にないけど、強いて言うなら転生していることにどういう反応をするのかが不安。
「よ~ん」
僕が元男ってことを、アンナは僕が言ってから知ったっていう感じだったから、鑑定では見れないんだと思う。
「さ~ん」
ということは、リオナも僕が元男ってことがわからない可能性が高いわけだから、性別に関してなにも言わなかったときは、追々話すことにしよう。
「に~、い~ち、ぜろ~! 【鑑定】」
カウントダウンを終えたリオナは、間髪入れず嬉々として鑑定を使った。
そして、ふむふむと呟きながら虚空(こくう)を見詰めるリオナ。
すると、だんだんと目が大きく見開かれていく。
「ティアナ、あなた転生者だったの!? それに、なにこのスキルの多さ!? 便利なものばかりだし!」
大声でそんなことを虚空を見詰めながら言うリオナ。
そういえば、自分がどんなスキルを持ってるのか未だに知らないじゃん。
いい機会だから教えてもらおう。
「……どんなの?」
ベッドに突っ伏したまま訊ねる。
「どんなのって……まぁ、いいか」
なにそれ気になる……。
まぁ、教えてくれるっぽいから気にしないようにするけど。
「ティアナのスキルは10個あって……」
そう前置きをして、僕が持っているスキルを教えてくれた。
【霧化】:あらゆる攻撃が当たらなくなる。※吸血鬼のみ使用できる。
【蝙蝠化】:蝙蝠になることは勿論のこと、一部のみを変えることもできる。※吸血鬼のみ使用できる。
【超速再生】:たとえ燃やし尽くそうとしても傷が付いた瞬間にすぐ再生するため、端から見れば無傷に見えるほど高速で再生する。ただし、灰になった場合は適応外。
【状態異常無効】:即死すら無効化する。
【痛覚無効】:どのような痛覚をも無効にする。※吸血鬼のみ使用できる。
【夜目】:暗闇の中でも昼間のように見える。※吸血鬼のみ使用できる。
【灰者復活】:灰なった後の夜になると発動。※吸血鬼のみ使用できる。
【言霊】:これを使用し命令すると、逆らえずその通りのことをする。しかし、吸血鬼に対してしか効果を発揮しない。※吸血鬼のみ使用できる。
【血の契り】:吸血し吸血鬼になった者と契約することで、眷属にすることができる。※吸血鬼のみ使用できる。
【日光遮断】:これを発動させることで、
転生物でよくあるパターンだね。
俗に言う〝俺TUEEEE〟ってやつ。
ただ、便利系スキルしかないから、戦闘ではなんの役にも立たない。
まぁ、争い事が苦手だから役に立たなくていいんだけど。
というか、【日光遮断】なんてスキルがあったことに驚きを隠せない。
知ってたら即行で使ってた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます